Ⅰ-2. The outbreak of phytoplankton causing shellfish poisoning induced by the Tsunami

YUTAKA OKUMURA, SETSUKO SAKAMOTO, YOSHIO MASUDA, TORU TANABE, SHINNOSUKE KAGA, SHIHO WATANABE, RINAKO NAKANO, TORU HIRAWAKE, KAZUHIKO ICHIMI, KENJI KANEKO, MOTOYUKI HARA
2021 Nippon Suisan Gakkaishi  
1. はじめに 2011 年 3 月の東日本大震災で発生した津波により, 海底に堆積していたシストが巻き上がり,麻痺性貝毒の 大発生につながったと考えられており, 1,2) その後,継続 して貝毒が発生している。一方,女川湾など宮城県中部 海域では貝毒は発生しなかったが,震災から 7 年後の 2018 年に貝毒プランクトンが大発生し数十年ぶりに出 荷自主規制となった。今回,柱状コア,DNA シーケン ス,衛星画像等を用いた解析により,東北沿岸で観察さ れた,震災直後と過去の津波発生時における Alexandrium 属の動向,及び 2018 年の発生要因について報告す る。 2. 柱状堆積物試料を用いた解析 沈降粒子等は海底に堆積するため,堆積物試料を鉛直 的に調べれば過去の状態を推測することができる。震災 後,大船渡湾では柱状コアの解析により Alexandrium 属など渦鞭毛藻の変動が明かになった。 3) 今回,1)仙台 湾,2)女川湾,3)長面浦で柱状コアを採取し解析を 行った。 1) 仙台湾大船渡湾では震災前後に Alexandrium
more » ... 沿岸でブルーム が観察されたのは 2012 年以降で,震災による調査の困 難さから震災直後の状況が把握できていない。採取した 0 62 cm のコアで,0 16 cm 層から 137 Cs が検出され, 2011 年 3 月 12 日以降の堆積泥と考えられた。8 10 cm 層のクロロフィル a 量(Chl a )が高く,震災直後に発 生した植物プランクトンのブルームによるものと推察し た。一方,Alexandrium 属のシストは 2 6 cm で多く, Chl a のピークより時期が遅く,仙台湾では震災直後に Alexandrium 属のブルームが発生しなかったと推察した (未発表) 。 2) 女川湾0 22 cm のコアで, 137 Cs は 0 7 cm 層 から検出され,特に 0 4 cm の値が高かった。海水,底 泥の 137 Cs は 2011 年 6 月 2012 年 2 月頃に最大と報告 されることが多く,0 4 cm 層は 2011 年 6 月以降の堆 積泥と推察した。Chl a は分解により古い堆積層では激 減するが,全層にわたり急激な減少が観察されず,0 22 cm は震災後の堆積層と推察した。葉緑体(Psb A) 遺伝子のシーケンスでは,10 11 cm,12 13 cm 層から 陸上植物が検出され,津波痕跡と推察した。旧 Alexandrium tamarense はより新しい堆積層の 3 4 cm で検出 されていた。そのため,女川湾でも旧 A. tamarense は 震災直後に増殖せず,翌年に増殖したと推察した。 4) 3) 長面浦湾奥で採取したコア 0 158 cm につい て,部分的に実施した放射性炭素年代測定等では,0 90 cm が現在,116 142 cm が 1400 年代後半となり, 上層が東日本大震災,下層が享徳地震(1454 年)の津
doi:10.2331/suisan.wa2861-2 fatcat:ze3po4vhxje3bnbbxeaylzohxq