Parallel Stories of Kṣāntivādin
忍辱仙人説話

Mamiko (Shinsui) OKADA
2017 JOURNAL OF INDIAN AND BUDDHIST STUDIES (INDOGAKU BUKKYOGAKU KENKYU)  
忍辱を実践する仙人が,残虐な王によって,手足やその他の身体部分を次々に 切断される物語(以下 忍辱仙人説話)は,パーリジャータカ,上座・部派仏教の 梵文文献,大乗経典, 『六度集経』をはじめとする多くの漢訳経典やその他の仏教 文献に,長短さまざまな形で残されている. 従来,忍辱仙人説話は,上記文献の翻訳の際に,注の形でパラレルの一部が提 示されてきた.しかし,未だそれらを網羅的に収集して比較研究がなされたこと はない.そこで,本研究は,① 先行研究が明らかにしたパラレルに,新発見のパ ラレルを加えた忍辱仙人説話文献一覧の作成,② 各話からモチーフを抽出して, 必須モチーフを提示,③ 諸モチーフ毎に各話の比較をして系統分類図を作成する ことを目的とし,最後に本説話の今日的メッセージについても考察する. 1.先行研究 先行研究としては,パラレルを,辞書的にあげたもの,注釈の形で示している ものの 2 種類がある.本説話のまとまったパラレル提示は,赤沼智善に始まる. 1931 年刊の辞典の Kṣantipāla と Kāḷi の項において Mv.,Jāt,大正蔵 no. 152,155,
more » ... 02,212,235-239,1509 ③,2083 の 13 編をあげた(赤沼 1931, pp. 262-263, 322) . 次に 1949 年,Étienne Lamotte は,その著書,p. 264 の『大智度論』巻 4(no. 1509 ②)の「忍辱仙人」に対する注で,出典として,あらたに JN,DhA,Khu,Bv, VM,AJM,Avk,VPP,大正蔵 no. 194,201,375,397,1509 ①,2042,2121 の 16 編をあげた(Lamotte 1949, pp. 264-265) .第 3 は干潟龍祥で,さらに,Mil,大正 蔵 no. 187,196, 425,1545 ① ② の 5 編とイコノグラフィーを加えた(干潟 1955 初版;改訂増補版 1978,p. 104 他) .この干潟の初版と増補版の間に,2 編の忍辱仙 人説話が報告されている.その 1 は Mark Dresden によって出版されたコータン語 (222) 印度學佛敎學硏究第 65 巻第 2 号 平成 29 年 3 月 ─ 817 ─
doi:10.4259/ibk.65.2_817 fatcat:ggymuenfxbgn7katthqbftxhom