A Multi-faceted Approach to Dementia Treatment by Young Researchers

Yuki Takada-Takatori, Satoshi Okuyama
2021 Yakugaku zasshi  
平均余命が伸びた超高齢社会において,認知症は 各ライフステージに様々な形で深く関与しており, 公衆衛生上の大きな問題となってきている.現在も 認知症患者数は増加し続けており,アンメット・メ ディカル・ニーズが高く,対症療法を中心とした現 在の治療薬から,根本的な治療のための創薬が求め られている.しかし,これまでに新たな機序の認知 症治療の開発は成功しておらず,新たな視点からの 創薬ターゲットが求められている.そのなかで認知 症対策として,国を挙げて,認知症の発症や進行を 遅らせる,また予防するなどの取り組みを強力に推 進していくことも示されている.近年では,臨床実 績を有する薬物を活用するドラッグリポジショニン グに加えて,食経験などが豊富な天然物資源の生理 活性作用や健康維持作用にも注目が集まっている. そこで,新たな認知症治療薬開発のみならず,治 療・診断・予防戦略などの新たな確立に向けて,薬 理学,物理化学,生体分析化学,薬物動態学,薬物 治療学など多分野の研究者の観点から多角的な議論 を行うために,昨年度の日本薬学会第 140 年会で表
more » ... 説ではシ ンポジウムでの発表内容を基に,それぞれの取り組 みについて各シンポジストに紹介して頂いた.本誌 上シンポジウムでは,それらの研究をより詳しく紹 介して頂くために,ここに執筆をお願いした次第で ある. 松山大学薬学部の奥山 聡は,抗認知症作用を有 する柑橘成分の探索と作用機序解析について,脳虚 血モデルマウスや老化促進モデルマウスを用いた取 り組みについて概説した.京都大学薬学研究科の矢 野義明博士には,アルツハイマー病発症において重 要なステップであり,神経細胞毒性を示すアミロイ ド b ペプチド凝集体形成の初期過程における蛍光 相関分光法による解析を紹介して頂いた.同志社女 子大学薬学部の喜里山暁子博士には,アルツハイ マー病治療薬の薬物動態学/薬力学解析と薬物相互 作用について,時間経過による効果の変化や臨床治 療における薬物間相互作用について論じて頂いた. オーストラリア Curtin 大学の Mark J. Hackett 博 士には,脳神経系において重要な働きが認められて いる金属イオンと認知症の関連について,異なるタ イプの認知症病態モデルマウスを用いたメタローム 解析に関するこれまでの知見を紹介して頂いた.富 山大学の泉尾直孝博士には,アミロイド b の多様 な立体構造のうち,特に神経毒性の強い毒性コンホ マーの同定並びに,この毒性コンホマーのみを産生 する新しいアルツハイマー病モデルマウスの開発に ついてご紹介頂いた.同志社女子大学薬学部の高鳥 悠記は,コリンエステラーゼ阻害薬の 1 つであるド ネペジルによる細胞内輸送制御分子 sorting nexin 33 の発現誘導とアミロイド前駆タンパク質のエン ドサイトーシス制御作用について解説した. 以上,本誌上シンポジウムの概要を紹介させて頂 いた.これら国際的かつ多角的な議論の取り組み は,今後の超高齢社会における認知症研究の推進及 び創薬応用の展開に重要であると考えられる.これ まで様々な研究分野で取り組み培ってきた研究基盤
doi:10.1248/yakushi.20-00251-f pmid:34078787 fatcat:ttppk5n5pjhqlizwb2buzyz4aq