My memorable dementia cases and studies on dementiaーALS with frontal dementia, Gerstmann-Sträussler-Scheinker's disease, Lewy body disease, parkinsonism-dementia complex, and other atypical dementias

Shigeki Kuzuhara
2017 Higher Brain Function Research  
は じ め に まず初めに,このような発表の機会をいただいた ことを, 第 40 回大会の武田克彦会長に感謝申し上げ る。会長からは, 「認知症のエキスパートという立場 で,自由に自分の経験を話して下さい」というご依 頼であった。研究者には同じ施設で一つの研究テー マにじっくりと取り組むタイプが多いと思うが,筆 者は若い頃は異動が多かったために,一つのテーマ だけに取り組むということはできず,移動先のニー ズに従って仕事をしてきた。研究手法だけは一貫し ており,臨床と病理を結合して病気を掘り下げる古 典的手法であった。その中で経験した,医学的に重 要な症例や興味ある認知症に関係した話題を,年代 に沿ってオムニバス風にお話ししたいと思う。 Ⅰ.1970 年代に注目した ALS with dementia 症例(東京大学神経内科研修医時代) 東京大学医学部附属病院での研修医時代に経験し た認知症症例の中で今日的意味があるのは, 「Pick 病様の前頭側頭型認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 」であった。今では三山型前頭側頭型認知症 として有名で,TDP-43
more » ... hy に分類されて いる。剖検で Pick 病とは異なる疾患であることが 分かり,村本治先生(後に渡米)がその特異性に注 目して報告した(村本ら 1980) 。三山吉夫先生が Archives of Neurology 誌 に "Presenile dementia with motor neuron disease in Japan. A new entity?" (Mitsuyama ら 1979)を発表したのとほぼ同時期 で,世界でもっとも早い時期の報告であった。 Ⅱ.ドイツ語圏外では初めての Gerstmann-Sträussler-Scheinker 病(筑波大学時代) 1977 年 3 月に,新設の筑波大学臨床医学系に講 師として異動し,中西孝雄教授,金澤一郎講師の下 で働いた。附属病院が開院したばかりでスタッフも 少なくて多忙であったが,伸び伸びと臨床と研究に 打ち込むことができた時期であった。この時に担当 ■エクスパートに聞く 1 さまざまな認知症との出会い ─ Pick-like presenile dementia with ALS,Gerstmann-Sträussler-Scheinker 病,レビー小体病,パーキンソン・認知症複合など 葛 原 茂 樹 * 要旨:神経内科医としての約 45 年の間に経験した思い出深い認知症症例と, 認知症に関係した研究と発見, それらにまつわる話題をオムニバス風に紹介した。1970 年代に経験した Pick 病様の前頭側頭型認知症を 伴う筋萎縮性側索硬化症(ALS)症例は,現代の TDP proteinopathy の一型である frontotemporal dementia-ALS であった。1979 ~ 1981 年の米国留学中に見た kuru 斑を伴う Creutzfeld-Jakob 病(CJD)とグア ムの筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン・認知症複合(ALS/PDC)の脳標本の知識が,帰国後に役に立ち, 筑波大学では Gerstmann-Sträussler-Scheinker 病,三重大学では紀伊半島の PDC の日本初の症例を発見 する契機になった。1983 年から 7 年間勤務した東京都老人医療センターでは,レビー小体病の臨床特徴 を明らかにし,アルツハイマー病と健常者の多数例を対象に老化脳のタウと Aβの免疫組織化学的研究に よって,その相違を明らかにした。また,レビー小体がユビキチン化されていることを初めて明らかにし た。研究に協力してくれた多くの患者と共同研究者に深謝する。 (高次脳機能研究 37 (2) :187 ~ 194, 2017) Key Words:非定型認知症,ALS with dementia,Gerstmann-Sträussler-Scheinker 病,レビー小体病, パーキンソン・認知症複合 atypical dementias,ALS with dementia,Gerstmann-Sträussler-Scheinker's disease, Lewy body disease,parkinsonism-dementia complex * 鈴鹿医療科学大学 看護学部看護学科 〒 513 ─ 8670 三重県鈴鹿市南玉垣町 3500 ─ 3 受稿日 2017 年 4 月 13 日
doi:10.2496/hbfr.37.187 fatcat:kki77cwmkvby3lus4zq7tkix54