I-2. Development of a Towed Sampling Gear for the Survey of Sound Scattering Layer
I-2.音響散乱層調査のための採集具の開発

YASUZUMI FUJIMORI
2007 Nippon Suisan Gakkaishi  
海洋表層に生じる音響散乱層(SSL)は主に動物プラ ンクトンや魚類マイクロネクトンで構成されることが知 られており,当該海域の生物量や主要魚類の餌生物量を 把握する上で,重要な解析対象である。こうした音響散 乱層における生物密度の調査には,多周波数利用可能な 科学魚探が使用される場合が多いが,魚探による魚種と プランクトン種の判別は不可能であるため,ネットサン プリングが必須となる。このようなサンプリングでは, NORPAC やボンゴネット等の鉛直あるいは斜行曳き採 集具が用いられることが多いものの,これらの小規模な 採集具では,大型の動物プランクトンや成長の進んだ仔 稚魚類,マイクロネクトンなどの生物の採集は困難であ るのが実状である。 こうした遊泳能力を持つ生物の採集には,比較的規模 の 大 き い IKMT ( Isaacs-Kidd Midwater Trawl ) 1) あ る いは Methot トロール 2) のように高速曳網が可能な採集 具が利用される場合が多い。しかし,IKMT は対水速 度の変化により有効網口面積が変動するため,ワープの
more » ... する必要があるなど,運 用上面倒な点がある。一方,Methot トロールは網口が 定型であるため,上述のような配慮を必要としないが, ディプレッサーの重量が大きいために取り扱いが必ずし も良くないという欠点があった。そこで,Methot ト ロールを基に定型網口枠を持つフレームトロール(以後 FMT, Framed Midwater Trawl) 3) を製作し,定量採集 に関する検討を行ってきた。ここでは,これまでの研究 の経過を概説するとともに,現在開発に着手している開 閉式フレームトロールの概要を紹介する。 FMT を用いた定量採集の検討 FMT は,組立て型のステンレス製円柱枠(約 40 kg) とナイロン 240 径のモジ網(当初はラッセル網地)に より構成され,ディプレッサーを用いずに,下部フレー ムに装着される脱着型の錘(10 kg×4~8 個)により沈 降させる仕様となっている(図 1) 。ただし,ディプレ ッサーを持たないために深層での採集には不向きであ り,このため,現在では主に表中層に形成される SSL の調査に利用されている。これまでに,対象となる生物 に対応した 4 種類のサイズ(16, 12.3, 4, 1 m 2 )の FMT が製作されているが,現在は,大抵の調査船において使 用できるという理由から,網口面積 4 m 2 が標準型とな っている。 定量採集を行うためには,対象とする生物に対して使 用する採集具の効率が把握されている必要がある。この 効率は,単純には採集対象となる生物量(掃過体積ある いは濾水体積中の生物量)と実際に採集された生物量の 比率と定義される。また,この比率は生物が採集具に入 る確率 l(入網率)と採集具内に留まる確率 r(残存率) の積として考えることができる。なお,対象生物に対し て十分小さい網目のネットを使用する場合には,後者を 無視することができるが,高速曳網を行う採集具では強 度等の面から使用できる網地が限られるため,対象に稚 仔魚期の個体のような非常に小さい魚類を含む場合には 考慮が必要となる。そのため,現在,トロール網におけ る選択性評価に利用されるズボン式コッドエンドを参考 にペアコッドエンド型の FMT を製作し,動物プラン
doi:10.2331/suisan.73.925 fatcat:zf75q5jnvrbgxonegrlebdpopy