Polycondensation via Complex-Catalyzed Carbon-Heteroatom Bond Formation
錯体触媒による炭素-ヘテロ元素結合形成反応を中心とした高分子合成

Junpei KUWABARA, Takaki KANBARA
2011 Kobunshi ronbunshu (Tokyo)  
受付 2011 年 2 月 22 日・審査終了 2011 年 3 月 1 日) 要 旨 遷移金属触媒を用いた炭素 窒素結合形成反応を重縮合反応に応用することで,ポリアニリン 類縁体やトリアリールアミン骨格を有する高分子を簡便に得ることができる.種々の条件の中でも,Pd と組合せる配位子が重合の効率に強く影響を及ぼすため,目的とする高分子の構造に合わせて適切な配位 子を選択することが重要である.これまでの検討から,二級アミン部位を有するポリアニリン類縁体の合 成においては BINAP が適しており,三級アミンであるトリアリールアミン骨格を主鎖に有する高分子の 合成においては P t Bu 3 が最適であることを見いだしている.一方で,炭素 リン結合形成反応も重縮合反 応に応用することができ,主鎖にキレート型のリン配位子を導入した高分子を合成することができる.こ の高分子に Pd を導入することで薗頭 萩原反応などを進行させる担持触媒となり,再沈殿によって回収 と再利用が可能であることを明らかにしている. 1 緒 言 遷移金属錯体触媒による炭素 炭素結合形成反応の発
more » ... れらの反応を利用した数多くの p 共役 高分子の合成が報告されている.山本法と呼ばれる 0 価 ニッケル錯体を用いたジハロゲン化アリールの重縮合 や,鈴木 宮浦クロスカップリング反応を利用した重合 反応などが広く知られている 1),2) .このような重合手法 が確立されることによって,従来の酸化重合や電解重合 では用いることができなかったモノマーを自在に選択す ることが可能になり,p 共役高分子の分子設計と機能開 発における基盤が築かれたといえる.これらの研究に関 しては数多くの総説にまとめられていることから,本報 では遷移金属錯体触媒を用いた炭素とヘテロ元素の結合 形成反応を鍵とする高分子合成を中心に述べる. 近年,炭素と窒素,酸素,硫黄,リンなどのヘテロ元 素の結合形成反応が,Pd, Ni, Cu 触媒などを用いるこ とで可能となっている.遷移金属触媒を用いる炭素 窒 素結合形成反応の開発は,1983 年の右田,小杉らによ る N,N-Diethylaminotributyltin とハロゲン化アリールの カップリング反応の報告に端を発する 3) .その後 1995 年に Hartwig および Buchwald らがすずを必要とせず N-H 結合を直接官能基化する触媒反応を報告した 4),5) . これは従来の Ullmann 反応と比べて温和な条件下で進 行することから注目を集めた.提唱されているこの反応 の機構を Scheme 1 に示す.まず配位不飽和な Pd 種に 対してハロゲン化アリールが酸化的付加し,その後アミ ンが Pd に配位する.さらに塩基によるアミンの脱プロ トン化と還元的脱離を経て触媒サイクルが完結する 6) . この触媒サイクルの円滑な進行を妨げる要因としては, 以下の三つが挙げられる.1. アルキルアミンを用いた 場合,還元的脱離と b 水素脱離が競合してしまう.2. 反応基質として一級アミンを用いた場合に,生成物であ る二級アミンがさらなる反応によって三級アミンとなる 反応が競合する.3. Pd 上の配位子が分解し生成物に取 り込まれる.これらの副反応の抑制に最も効果があるの が,適切な配位子の選択である.重縮合の素反応におけ る副反応は,伸長反応の妨げとなるのに加えて分岐構造
doi:10.1295/koron.68.281 fatcat:i74x6duzabc4xlpvc2ryo3im4a