Reaction Dynamics of Gas-Phase Transition Metal Atoms

Kenji Honma
2008 Molecular Science  
1 . はじめに 分子科学という分野の中で,化学反応の占めている位置 は非常に大きなものがある。現在「ナノサイエンス」と 「ライフサイエンス」に関連した研究が活発にすすめられて いるが, 「ナノサイエンス」における物質創製は全て化学反 応に依っているし,生体における生命現象は全て化学反応 だと考えられる。つまり,化学反応は分子という自然の階 層において基調となる現象といっても良い。その化学反応 の中で,気相分子・原子の反応は最も基礎となる対象で, 1 9 7 0年代以降のレーザーや分子線など実験技術の発展で非 常に多くのことが解明されてきた。現在,研究の方向は溶 液中・固体表面上など,非孤立分子状態における化学反応 の解明に進んでいる。気相素反応の研究にとって,依然と して多くの解明するべき課題はあるが,いくら「基礎をな している」からといって物質創製や生命科学反応を理解す るときに,いちいち「反応ダイナミクス」を明らかにしな いといけないわけでもなく, 「何を解明するか」という問題 は非常に重要になっていると思われる。 化学反応は反応のポテンシャルエネルギー面によって支
more » ... ので,多次元座標系で表されたポテンシャル エネルギー面とその上の反応系のダイナミクスを理解すれ ばその反応を理解したことになると考えられる。しかし, 反応にとって重要なのは,もちろん実際に古い結合が切れ 新しい結合が生成している「反応の遷移状態」付近におけ るポテンシャルエネルギー面がどのようになっているかと いう情報である。ここを反応系がどのように通過していく のかを実験的につかむことができれば,その化学反応につ いて実験から理解できたことになる。遷移状態近傍に存在 する共鳴状態の観測や,遷移状態を通過する系のダイナミ クスを反映する物理量の観測を目指した研究は,化学反応 研究にとって現在のフロンティアの 1つだと考えられる 1 。 単一のポテンシャル面によって支配されている反応,特 に 3原子系など簡単な反応系とは異なり,複数の電子状 態・ポテンシャル面が関与するような反応については,応 用の観点からも重要な問題が多い。例えばハロゲン原子に は様々な分子と反応し,大気化学にとって重要な化学種で
doi:10.3175/molsci.2.a0025 fatcat:shhlpqbswfbzld7jrjod733yzi