ロシア東部の地域開発政策推進に係る政策文書の体系に関する研究
Study on the System of Policy Documents for Promoting Regional Development Policy in the Eastern Region of Russia

Hirofumi Arai
2011 Journal of the City Planning Institute of Japan  
1.研究の背景と目的 現行の国土形成計画(全国計画)においては,5 つの戦 略目標の 1 つとして, 「東アジアとの円滑な交流・連携」が 謳われている。個別の広域地方計画を見ると,東北圏では 「環日本海広域交流圏の形成プロジェクト」が,北陸圏で は, 「東アジアに展開する日本海中枢拠点形成プロジェク ト」が広域連携プロジェクトとして盛り込まれている。 しかしながら,連携先として想定されている地域がいか なる地域であり,計画期間においてどのような地域を目指 しているのかが十分把握されているとは言い難い。これら 地域の振興政策の内容や展開状況を伝える記事や論文等は 参考文献 1), 2), 3), 4), 5) に掲げたものなど相当数あるものの,イ ンフラ整備にかかる各種計画など複数の政策文書を体系的 に把握した上で,当該地域の開発政策や開発計画を論じる 既往文献を確認することはできなかった (1) 。 本論文では,我が国に隣接する国・地域のうち,ロシア 東部地域に注目する。 この地域については, 「極東ザバイカ ル発展プログラム」等と称される政策文書(正式名称につ いては後述。
more » ... する。これまで,我が国においては, この文書が極東地域の将来像を描く基幹的な政策文書であ ると紹介されてきている (2) 。しかし,現在では,この地域 の開発に係る政策文書はこれだけではなく,その位置づけ も変容してきている。本論文では,ロシア東部地域の開発 に関わる政策文書の体系を明らかにすることを目的とする。 以下では,対象地域の概要説明の後,ロシア東部に限定 された政策文書及び全国を対象としつつもロシア東部の地 域開発に大きな意義を持つ政策文書を取り上げ,その策定 経緯や内容を把握した上で,相互比較などを通じて,位置 づけを明らかする。 2.対象地域の概要 本論文では,ロシア東部の地域開発政策における基本単 位の一つとなっている 「極東バイカル地域」 を対象とする。 具体的には,極東連邦管区全域(1 共和国,3 地方,3 州, 1 自治州,1 自治管区)及びシベリア連邦管区の一部(1 共 和国,1 地方,1 州)である(図 1) 。そこからイルクーツ ク州を除くと「極東ザバイカル地域」となる。なお,本論 文の目的である政策文書体系を論じる上では, 「極東地域」 , 「極東バイカル地域」 , 「極東ザバイカル地域」を分ける意 義は小さいため,正確さを欠く表記ではあるが,対象地域 を原則として「極東」と表記することとする。 地域の人口は 1,102 万人(2010 年1月1日現在,全国の 7.8%) ,面積は 773 万 km 2 (全国の 45%)であり,人口密 度は 1.4 人/km 2 と,非常に人口が希薄な地域である。 (出所)筆者作成。
doi:10.11361/journalcpij.46.337 fatcat:vipaypcor5fc5kx5o25cpbkx5m