Critical upper airway edema by long exposure of cleanser containing anionic surfactant –A case report–

Taiki Moriyama, Hirotaka Sawano, Chisaki Takahara, Daisuke Yamada, Yasuyuki Hayashi
2021 Journal of the Japanese Society of Intensive Care Medicine  
J Jpn Soc Intensive Care Med 2021;28:121-2. はじめに クレンザーは研磨剤と陰イオン界面活性剤を主な成 分とし,誤飲をしても中毒性は低く,比較的安全とさ れている 1) 。我々は,陰イオン界面活性剤を含むクレ ンザーの長時間口腔内曝露により,上気道閉塞をきた した症例を経験したので報告する。 症 例 症例:87 歳,女性。 既往歴:アルツハイマー型認知症。 内服歴:特記事項なし。 現病歴:救急搬送日,口唇が腫れているために家族 より救急要請となった。救急隊接触時,歩行可能でバ イタルサインは安定しており,口唇に軽度の腫脹を認 めた。家族の情報から,最終健常時間から 2 時間が経 過しており,液体洗剤 (クリームクレンザーレモン ® , 第一石鹸)100 mL を誤飲したことが判明した。患者 の状態が安定していたために複数の 2 次救急病院に受 け入れ要請されたが対応困難であった。 病院選定中に, 徐々に口唇の腫脹が悪化してきたため,3 次医療機関 での対応を要し当院に搬送となったが,現場に 1 時間 以上滞在していた。
more » ... 探したが,上記液体洗剤 以外に誤飲したと思われるものはなかった。 来院時現症:血圧 146/101 mmHg,心拍数 100 / min,呼 吸 数 18 /min,SpO2 97 % ( 室 内 気 ) ,体 温 37.2℃,意識 GCS E3V2M5 であった。呼吸音は両側清 (stridor 聴取せず) ,口唇および舌の浮腫が著明で,口 腔内にはクレンザーが少量残存していたため,速やか に吸引した (推定 20 -30 mL) 。来院後 30 分程度で 徐々に酸素化が低下し,stridor が出現したため,気管 挿管を行うこととした。経口気管挿管を試みたが,口 腔内の浮腫が著明で喉頭展開が不可能であった。ビデ オ喉頭鏡による声門の視認も不可能であった。SpO2 測定不能,呼吸音聴取不能となり,輪状甲状靭帯切開 を施行し,6 mm 気管チューブを挿入した。これによ り換気が可能となり,酸素化は著明に改善した。気管 支鏡検査を施行すると,口腔内から咽喉頭は浮腫のた め視野の確保ができず観察不可能であり,主気管支か ら末梢には異常所見を認めなかった。同日に外科的気 管切開術を施行し,ICU 入室となった (Fig. 1) 。 入院後経過:第 7 病日までは顔面と口腔内粘膜の腫 脹に大きな変化はなく経過した。その後,肉眼的に腫 脹が軽減していったために,抜管に向けて喉頭鏡によ る咽喉頭の観察を連日行った。腫脹が改善したために 第 15 病日に気管切開チューブを抜去した。抜管後,呼 吸状態は安定して経過した。第 30 病日に気管支鏡を 用いて咽喉頭の観察を行ったところ,声門周囲がごく 僅かに浮腫状となっているのみであった。経口摂取機 能回復のために嚥下訓練を行なったが,咽頭部の痛み を訴える動作をし,認知症の影響もあり,嚥下指示に 陰イオン界面活性剤を含むクレンザーの長時間曝露により致 死的な上気道浮腫をきたした 1 例 森山 太揮 澤野 宏隆 高原 千咲 山田 大輔 林 靖之
doi:10.3918/jsicm.28_121 fatcat:iiejwdjyp5g5fittncbu2jcyxq