VIII. Polymyalgia Rheumatica
VIII.リウマチ性多発筋痛症

Shinsuke Yasuda, Tetsuya Horita
2015 Nihon Naika Gakkai Zasshi  
はじめに リウマチ性多発筋痛症 (polymyalgia rheumat-ica:PMR)は高齢者に好発する慢性炎症性疾患 であるが,発症は比較的急性であり,上肢帯, 下肢帯近位筋の痛みやこわばりを主症状とす る 1) .筋痛はあるものの筋力低下や筋萎縮がな いのが特徴で,関節痛を伴うことも多いため関 節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)との鑑 別が問題になるが,一般に炎症所見はRAと比較 して高値である.通常は少量の副腎皮質ステロ イドが著効するが,減量後も長期にわたる内服 を要することが多いため,正確な診断が要求さ れる.とはいえ,診断に特異性の高い血液検査 はなく,治療的診断を行わざるを得ない場合も 多い.PMR患者では巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis:GCA)を合併することがあり,合併例 では治療方針も異なるため, 注意が必要である. 1.PMRの疫学 PMRは50歳以上で発症し,年齢とともに発症 率は上昇する.男女比は 1:2~3 とやや女性に 多い.PMRの有病率は白色人種,特に北欧で高 く,人口 10
more » ... は 50 歳以 上で 60~80 人程度とされる 2, 3) .本邦では,欧 米人と比較して発症頻度は低いとされる. 側頭動脈炎あるいはGCAはPMRの 5 分の 1 に 合併し,GCAの約半数にPMR様症状が認められ ること,頭痛などがなくてもPMR患者に側頭動 脈生検を行うと 10~15%に動脈炎の所見が認 められる.PMRとGCAはいずれも似通った疫学 的背景の患者に急性炎症反応を伴って発症する ことなどから,共通の病因を持った関連の深い 病態であると考えられる.本邦では若年女性に 好発する高安動脈炎の頻度が高いが,GCAの頻 度は低く側頭動脈炎の病名で 700 名程度とされ リウマチ性多発筋痛症 要 旨 保田 晋助 堀田 哲也 リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は高齢者に 好発する炎症性リウマチ性疾患であるが,診断に特異的なマーカーはな く,特に関節リウマチとの鑑別が問題となる.少量の副腎皮質ステロイド が著効する場合が多く,多くの場合中止が可能であるが,中止困難例や再 発例など経過は多彩である. 巨細胞性動脈炎を合併する症例や大型血管炎 が潜在する症例があり,注意を要する. 〔日内会誌 104:2157~2162,2015〕
doi:10.2169/naika.104.2157 fatcat:ekdmetyaongwxhiwhfr42sn7pu