Special Issues No.3 : Measurement Technique for Ergonomics, Section 2 : Measurements of Human Response Effected by the Ambient Environment (5)
特集③人間工学のための計測手法 第2部:周囲環境と人体影響の計測(5)

Kazuhide ITO
2015 The Japanese Journal of Ergonomics  
さて,現下の地球環境問題やエネルギー問題を背景と して,建築分野に関連する各種エネルギー消費の大幅削 減が当然の命題として課されている.環境配慮やエネル ギー消費の最小化は当然の課題であるものの,居住者や 執務者の安全性,健康性,快適性等を大きく損なうこと も又問題であり,建築設備設計や室内環境設計では,こ のトレードオフの課題に対する最適解の探査と提示が 求められている.筆者は建築環境学や建築設備工学の 教育を受け,現在は室内環境の質(Indoor Environmental Quality:IEQ)と人体影響 に関 す る研究, 特 に数値 シ ミュレーションによる予測・評価技術の開発研究に従事 しているが,研究の軸足は室内環境調整や室内環境設 計の視点にある.本稿はこの室内環境設計や数値シミュ レーションの立場から, 「室内空気質と人体影響の計測」 の現状と問題点に関して整理してみたい. 2.室内空気環境設計 本稿では室内の空気環境に限って議論する.一般に, 室内空気環境調整を行う上での第一段階は,設計目標値 を設定することにある.引き続いて,その達成の為にイ
more » ... ンニングコスト等を総合的に考慮し た最適設計を行うことになる.設計目標値として例えば 室内空気質(Indoor Air Quality:IAQ)に着目した場合 には, (室内よりは相対的に清浄と思われる外気を導入 する)換気量や(化学物質等を放散するであろう)建材 の使用量といった定量的に調整可能な要素に着目し,そ の量を調整することになる. 換気による室内空気質調整を行う場合には,健康で衛 生的な室内空気環境を維持するための各種の濃度基準や ガイドライン値を担保するよう換気量が決定されること になる.質点で完全混合が仮定できるような単純な系で, 汚染物質の発生量と濃度基準値が既知の場合,紙と鉛筆 があればマスバランス式から設計換気量が簡単に決定で きる. 近年では,室内環境の不均一性を積極的に利用して, 居住域や作業域といった局所領域の環境調整に着目した 室内環境設計の重要性が認識されている.この場合,換 気量決定のための設計目標値は,室の代表的な(即ち時 間的,空間的な平均値としての)濃度基準値から,局所 領域の汚染物質濃度もしくは個人曝露濃度といった空間 不均一性の高い要素へとシフトする.更に,オフィス空 間等では,健康・衛生的で快適であることに加えて,作 業者の生産性を向上させるような質の高い室内環境の提 供が求められるようになってきた. 室内環境制御の主たる対象が(建物オーナーが人件費 を負担している)作業者であることを鑑みれば,作業者 の「パフォーマンス」 「プロダクティビティ」 「作業効率」 や「知的生産性」といった要素が設計目標となることは 自然であるともいえるが,室内環境設計で設計目標の対 象とするためには,少なくとも影響を定量化する関係 式や予測モデルが必須となる.これらを構築する為には < General remarks > Special Issues No.3:Measurement Technique for Ergonomics, Section 2:Measurements of Human Response Effected by the Ambient Environment (5)Indoor Air Quality and Impact on Psychophysiological Response, by Kazuhide ITO. 特集③人間工学のための計測手法 第2部:周囲環境と人体影響の計測(5) 1 -室内空気質の計測とその生理心理反応数値シミュレーションからみた計測の 課題-伊藤一秀 2 1 受付:2015年3月13日 受理:2015年5月27日 2 九州大学総合理工学研究院 Kyushu University, IGSES ■総 説■ 190 人間工学 Vol.51, No.3('15)
doi:10.5100/jje.51.190 fatcat:ckgsspyqqranjb5uoxwyh3ekam