Emergence of Adsorption Property Induced by Nanometer-sized Metal-Organic Framework Thin-film

Tomoyuki HARAGUCHI, Hiroshi KITAGAWA
2019 Journal of The Surface Finishing Society of Japan  
多孔性材料は内部に無数の細孔を有しており,分子を取り 込んで吸着する性質を持つことから,さまざまな目的に用い られる重要な機能性物質である。たとえば石油工業における 触媒,分離材料から,脱臭剤などの様々な場所に使用されて おり,もはや多孔性材料なしに現代の生活は成り立たないと いっても過言ではない。多孔性材料には長い歴史があり,活 性炭は 4000 年以上,ゼオライトでは約 300 年の歴史がある。 近年,多孔性配位高分子 (Porous Coordination Polymer) あるい は金属-有機構造体 (MOF:Metal-Organic Framework) と呼ば れる多孔性の金属錯体が新規多孔性材料として注目を集めて いる 。図 1a に示すように,MOF は金属イオンと有機配 位子の配位結合を介した自己集合により形成され,規則正し く配列したナノ細孔を有しているために高い空隙率や結晶性 を有しており,ガスの分離や吸蔵特性を示す。加えて,活性 炭やゼオライトなどの従来の多孔性材料に比べて設計性や物 質群としての多様性に優れており,細孔のサイズ,形状など
more » ... わせによって多彩にコントロールするこ とが出来る。さらに,共有結合やイオン結合から形成される 剛直な無機多孔性材料とは異なり,MOF は比較的弱い配位 結合およびπ-π相互作用などによって組み上がっているため 柔軟な骨格構造であると言え,この点でも従来の多孔性材料 とは異なる 。したがって,この柔軟性に起因するユニーク なガス吸着とそれにともなう動的構造変化が一部の MOF に おいては観測される。例えば図 1b に示すように,ある特定 の MOF はガスを導入してから閾値となるガス圧に達するま で細孔が閉じた状態 "Closed" を保ち, ある分子圧 (ゲートオー プン圧) を超えた時に開いた構造, "Open"に変化して吸着 量が急激に増加を始めるとともに骨格同士の間隔が開く構造 転移を示す。分子圧を下げていくと再び"Closed"へ構造が 変化し,吸着等温線はヒステリシス曲線を描く。こうしたユ ニークな吸着挙動は「ゲートオープン現象」と呼ばれ,比較 的弱い相互作用で形成されている MOF の柔軟性に起因する 現象である , 。ガス種によって異なるゲートオープン圧を 持つことから,ガスの分離膜やセンサー,あるいはスイッチ ングへの応用が提案されている。 近年,高効率なガスの分離膜やセンサーなどの開発のため, MOF を薄膜化する技術が注目されている , 。デバイス応 用に向けて MOF を薄膜化するには,素機能の集積化や細孔 を効率的に利用する観点から,一層ごとに精密に膜厚,結晶 多孔性金属錯体のナノ薄膜化によるガス分子吸着特性の発現 原口 知之 a ,北川 宏 b a 東京理科大学 理学部 第二部 化学科 (〒 162-8601 東京都新宿区神楽坂 1-3) b 京都大学 大学院理学研究科 化学専攻 (〒 606-8502 京都府京都市左京区北白川追分町)
doi:10.4139/sfj.70.359 fatcat:nwbfi7wfarfxjdb3a36uxilswi