症例は 79 歳女性.前胸部痛を自覚し近医を受診,心電図より急性心筋梗塞が疑われた.ショックバイタル であったためドクターヘリにて当院へ緊急搬送された.到着後すぐに IABP を挿入し緊急冠動脈造影を行っ た.左前下行枝(LAD)#7 に完全閉塞を認め,循環器内科により PCI を施行した.CCU へ帰室後,経胸 壁心臓超音波エコーにて心尖部付近の前壁中隔に穿孔を認めた.入院 5 日目にウマ心膜パッチを用いた手術 を施行した.梗塞部位は広範囲で血腫を伴っており,組織は脆弱であった.術後の経胸壁心超音波検査で遺 残短絡を認めなかった.術後経過良好で術後 55 病日に独歩退院となった.Infarct exclusion 法に遺残短絡 を残さないための工夫を加えた modified infarct exclusion 法により,広範囲出血性梗塞を伴う心室中隔穿 孔例に対し,良好な結果を得たので報告する.日心外会誌 42 巻 2 号:168-171(2013) キーワード:心室中隔穿孔,VSP,modified infarct exclusion 法 A 79 year-old woman

more »

... as given a diagnosis of acute myocardial infarction and was immediately transferred to our hospital by a helicopter. Cardiologists successfully revascularized the occluded left anterior descending artery which was considered to be the care of this case. After that, they detected a large ventricular septal perforation by transthoracic echocardiography. We performed repair of the ventricular septal perforation 4 days later, with a modified infarct exclusion technique. Residual shunt flow was not seen by echocardiography after the operation. This patient recovered uneventfully and was discharged on postoperative day 55. Jpn. J. Cardiovasc. Surg. 42 : 168-171(2013) Keywords:ventricular septal perforation, VSP, modified infarct exclusion technique exclusion することができれば,穿孔部の閉鎖に補助的な 心膜パッチの使用は必要ないと考えた. この方法の利点は,Kobayashi らが論文中 12) に述べてい るように,ウマ心膜を心筋へ縫着する前にパッチの大きさ を決める必要がないことである.ウマ心膜と正常心筋への いちばん重要な縫合が終了した後に,ウマ心膜を袋状に形 成するため,運針に集中でき,縫合部位に皺が形成されに くい.また,完成形は立体的な袋状の形状となるため,あ る程度左室容量も保たれるとされる.しかし,もともとの 左室の形状とは異なる形となるため,これがどの程度術後 の心機能に影響を与えるか不明確である.もちろん,正常 心筋壁と同じような機能的な左室形態および容量の改善が 得られるわけではないので,術後の左室内血栓の形成な ど,術後経過中の合併症に注意してフォローする必要があ ると考える. われわれが経験したような,広範囲の出血性梗塞を伴う VSP 症例に対し,この modified infarct exclusion 法は有用 な術式であったと考える.ただし,術後中長期成績につい ては,今後フォローアップが必要である. 結 語 広範囲出血性梗塞を伴う心室中隔穿孔症例に modified infarct exclusion 法による閉鎖術を行い,良好な結果を得 たので報告する. 文 献