平成23年度食酢の研究業績

編集部
2012 JOURNAL OF THE BREWING SOCIETY OF JAPAN  
は,マルベリー果汁を用いて,液体発酵に よるマルベリー酢の製造について報告した。酢酸発酵 における最適条件は,発酵温度 31℃,酢酸菌接種量 は 10%,そして通気は 0.15 ml/ml・min であった。 Tessaro ら 2) は,非市場オレンジを原料とした食酢 の製造について報告した。3 つの糖濃度の異なる処理 (T1:天然果汁,T2:Brix 18 度,T3:Brix 22 度) を施して酒精発酵及び酢酸発酵を実施した。それらに ついての化学分析を行ったところ,T2 及び T3 処理 において,アルコール及び食酢の生産が良好であった。 これは高糖濃度によって微生物による変換効率が上が ったためと思われる。 Wang ら 3) は,ブドウホオズキ果実を主原料とした 食酢製造について報告した。直交試験により発酵の至 適条件を検討したところ,酒精発酵は発酵日数 5 日, 発酵温度は 24℃,ブロス pH 4.0,酢酸発酵では発酵 日数 6 日,発酵温度は 30℃,酢酸菌接種量は 7%, pH 4.5 の条件が適していた。こうして得られた食酢 を使った果実酢飲料は,果実酢
more » ... 果汁 12%相当 糖度,0.4%食塩の配合とした。 Xing ら 4) は,バナナとオレンジの混合酢を ZHK-1 ワイン酵母(Saccharomyces cerevisiae)とアセトバ クターを主菌として,酒精発酵や酢酸発酵について検 討し,液体タンク発酵にて製造した。最適な成分比率 平成 23 年度食酢の研究業績 平成 23 年度の食酢の研究業務を見ると,本年度も多方面に亘っている。原料及び原料処理では,昨年度 と同様に種々の原料から食酢の製造を行っている。特に果実を原料にした食酢製造の取組みが多く,原料の 特徴を上手く引き出す発酵法が導きだされている。酢酸菌の研究では,耐熱性や高糖濃度耐性菌が見出され ており,地球温暖化への有力な対応手段として,今後の食酢製造への応用を期待したい。酵素に関する研究 では,酢酸菌を特徴づけるアルコール及びアセトアルデヒド酸化系に加えて,糖アルコールを基質とする酵 素について多数報告されている。分析については,各種製品を特徴づける香味成分の分析と,製品の安全性 を確認するための残留農薬の分析法や保存料含有量の分析法の条件検討報告が多かった。機能性については, 食酢中の抗酸化能を有する成分による活性酸素除去について,多数検証されていた。今後もより一層の研究 開発と業界の発展を期待している。 編 集 部 は,バナナ果汁とオレンジ果汁が 1:2,最適な酒精 発酵条件は,発酵温度 30℃,pH 4.2,糖含量 16%, 酵母 4%であり,酢酸発酵では,発酵温度 32℃,初発 アルコール濃度 8%,発酵日数 4 日間,接種量 8% が 最適であった。発酵液にシリカゲルを 300mg/L 添加 し,40 分間処理することで,透明度が 93.7%の清澄な 液が得られた。この果実酢はバナナとオレンジ由来の 特徴的なフレーバーを有していた。 Lin ら 5) は,トマトを原料にして,発酵条件パラメ ーターを最適化した食酢発酵を行った。酒精発酵の至 適条件は,28℃,糖含量 12%,Saccharomycetes 菌体 接種量 0.4%であり,酢酸発酵は,発酵温度 31℃,酢 酸菌接種量 10%,アルコール度数は 6%(v/v)が最 適条件であった。 Liu ら 6) は,キウィを原料とした果実酢含有の健康 的な飲料を開発するにあたり,発酵やブレンド条件を 体系的に研究した。酢酸発酵の至適条件は,初期アル コール濃度 6%,酢酸菌接種量 10%,発酵時間は 132 時間であった。キウィ果実酢飲料の配合比率は,食酢, キウィ果汁,蜂蜜がそれぞれ,15・50・2%であった。 Cao ら 7) は,褐色米及びりんご・トマト・ニンジン のミックスジュースを用いて,りんご酢製品を開発し た。果実酢の至適酒精発酵条件は,28℃で 6 日間,り んご・トマト・ニンジンの混合比 1:1:1 のミックス ジュースと,褐色米はそれぞれ 10%,6%の配合比率 であった。酢酸発酵の最適条件は,初期アルコール濃
doi:10.6013/jbrewsocjapan.107.656 fatcat:jj24funeznflbn7kknv6m4lib4