Placebo response in Parkinson's disease: Comparisons among 11 trials covering medical and surgical interventions

Christopher G. Goetz, Joanne Wuu, Michael P. McDermott, Charles H. Adler, Stanley Fahn, Curt R. Freed, Robert A. Hauser, Warren C. Olanow, Ira Shoulson, P.K. Tandon, Sue Leurgans
2008 Movement Disorders  
Key Word パーキンソン病,プラセボ,無作為臨床試験 プラセボによるパーキンソン病(Parkinson' s disease; PD)の改善が,これまでに少数例で報告されている。 本研究では,プラセボによる PD の改善を厳密に定義す ることで,プラセボ反応の発生頻度と時期を検討し,い くつかの PD 臨床試験においてポジティブ・プラセボ反 応を予測する患者関連および試験関連特性を明らかに した。我々は,PD 患者を対象とし,PD 重症度とプラ セボ割り付け率が異なる 11 件の内科的・外科的介入試 験から,プラセボ群の個別患者データを収集した。ポジ ティブ・プラセボ反応は,ベースライン時と比較して, Unified Parkinson' s Disease Rating Scale(UPDRS) Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)の総スコアが 50%以上改善,もしくは UPDRS Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)の 2 項目以上で 2 ポイント以上 低下と定義した。ポジティブ・プラセボ反応率は,経過 観察期間の早期(3 ~ 7 週) ,中期(8 ~ 18 週) ,後期 (23 ~
more » ... 5 週)で計算した。患者関連および試験関連特 性に関するポジティブ・プラセボ反応のオッズ比は,一 般化推定方程式でフィッティングしたモデルから求め た。本解析の適格基準を満たしたプラセボ群の患者は 858 例であった。対症療法の必要がない患者を対象と した試験は 3 件,motor fluctuation はないが対症療法 を必要とする患者を対象とした試験は 2 件,motor fluctuation がある患者を対象とした試験は 6 件(内科 的介入 3 件,外科的介入 3 件)であった。総プラセボ 反応率は 16%(範囲:0 ~ 55%)であった。ポジティ ブ・プラセボ反応のオッズが高かったのはベースライン 時の UPDRS Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)のスコアが高い患者であり, 試験特性としては,motor fluctuation がある PD 患者 を対象とした試験,外科的介入試験,あるいはプラセボ 割り付け率の高い試験でオッズが高かった。プラセボ反 応は経過観察期間の早期・中期・後期で同様に認められ た。プラセボによる改善は大半の PD 臨床試験で認めら れ,6 ヵ月の経過観察期間を通じて同様に分布すること が明らかになった。PD 臨床試験では,プラセボ反応率 への影響因子を認識した上で個別の試験デザインを決 定する必要がある。 プラセボ介入によってポジティブな臨床反応が起こる ことは,患者にとって有益ではあるものの,臨床試験に おいては実薬治療による治療効果の判定があいまいと なってしまう 1 。ポジティブな期待感,意欲,目新しいこ とへの反応を司る神経経路にはドパミン作動性の活性化 が関与しているため 2,3 ,パーキンソン病(Parkinson's disease; PD)患者に認められる高いポジティブ・プラセ ボ反応率には特別な関心が寄せられている 4,5 。プラセボ 介入時のポジティブ反応率には,患者関連ならびに試験 関連の様々な因子が影響する可能性がある。患者側の因 3 C.G. Goetz et al. 子としては,年齢,性別,ベースライン時の各患者の PD 重症度,PD 罹病期間が役割を果たしていると推定され, 試験側の因子としては,介入方法(薬物あるいは手術) , プラセボ割り付け率,試験に登録された患者集団のタイ プがプラセボ反応率に影響すると考えられている 6 。さら に,これらの因子は単独で,あるいは相乗的に作用する 可能性がある。我々はこれまでの PD 試験に,妥当性の 確立している転帰評価尺度として Unified Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS)Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)スコアを用 いたプラセボ効果の厳密な定義を適用した。試験は 2 つ のタイプ,すなわち身体能力障害の改善を目的とする対 症的介入試験と,症状の改善を期待するのではなく臨床 状態の悪化阻止を目標とする治療試験に分けられた 7,8 。 これら 2 タイプの試験においてポジティブ・プラセボ反 応率は同様であったが,患者/疾患特性,介入方法,プ ラセボ割り付け率による潜在的影響の詳細に関しては検 討しなかった。今回の研究では,試験デザインと患者集 団が異なる 11 件の多施設共同 PD 試験から,プラセボ群 の被験者個別データを入手して検討した。本研究の目的 は,大規模かつ慎重に選択された多施設共同試験を用い て,プラセボ反応の発生頻度,発生時期と持続性,個々 の被験者および試験関連因子がプラセボ改善率に及ぼす 相対的影響を評価することである。 対象および方法 データセット 今回,解析を目的として 11 件の無作為プラセボ対照試 験からプラセボ群の個別患者データを入手した。我々は, 試験デザインと患者集団のタイプが異なる様々な PD 無 作為臨床試験を使用するよう努めた。すなわち,内科的 介入 vs 外科的介入,パーキンソン症候群に対する対症療 法は必要ない患者 vs motor fluctuation はないが対症療法 は必要な患者 vs motor fluctuation があり対症療法が必要 な患者,プラセボ割り付け率が 50%未満の試験 vs 50% の試験について比較・検討した。筆頭著者(CGG)は, 上記カテゴリーに一致するプラセボ群を設定した臨床試 験の主導研究者と連絡をとった。さらに適格基準として, 特発性 PD 患者を試験対象としていること,主要転帰評 価項目(後述)がベースライン時と 6 ヵ月間にわたる経 過観察期間の 3 つの時期,すなわち早期(3 ~ 7 週) ,中 期(8 ~ 18 週) ,後期(23 ~ 35 週)で評価されているこ とを要件とした。 主要転帰評価項目 主要評価項目は UPDRS Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)とした。Motor fluctuation のある患者については, 「on」状態(その患者 の運動機能が良好な時点と定義)の UPDRS Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動) を使用した。データ入手率が良好であったため(98%) , 欠測項目があった場合には比例補正により総スコアを算 出した。 「off」状態のスコアについては,複数回の受診時 にこれらのスコアを記録したのが外科的試験の 3 件 36 例 にとどまったため,使用しなかった。 プラセボ反応の定義 データ解析に先立ち,各受診時のポジティブ・プラセ ボ反応は,ベースライン時と比較して on 状態の UPDRS Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)の総スコアが 50%以上改善した場合,も しくは UPDRS Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)2 項目以上が 2 ポイント以 上ポジティブ方向に変化した場合と定義した。総スコア の改善が 50%で,2 項目が 2 ポイント以上悪化した場合 には,その患者はプラセボ反応者とはみなさなかった。 この手法は,我々が以前に実施した PD のプラセボ効果 に関する 2 つの試験 7,8 の方法を踏襲したものであり,最 初に行ったアゴニスト単独療法試験 7 に際し実行委員会 が定めたものである。同委員会で合意が得られたように, この定義は UPDRS のスコアの全域にわたって妥当性を もって使用可能であり,ベースライン時のスコアが低い 患者ほど 50%改善の基準を満たしやすく,2 項目以上の 改善に関する基準はベースライン時の UPDRS のスコア が高い患者で満たされる確率が高いと考えられた。また 2 つの基準を設定することで,総合的改善(総スコアの 50%低下) , ならびに著明であるが非常に限定的な改善(2 項目で最低 2 ポイントの低下)の両者を評価することが できる。ベースライン時の UPDRS Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)のスコ アが欠落している患者,経過観察時のスコアが欠落して いる患者,あるいはベースライン時スコアが 5 ポイント 未満の患者は除外した。試験デザインおよび試験期間は 様々であったが,一貫性のあるデータ解析を行うため, すでに定義した早期・中期・後期の各経過観察期間以外 の受診は検討しなかった。これらの各期間内に複数回の 受診があった場合には,その試験の対象患者の大半で データが利用可能であった受診時点について検討した。 また,この基準を満たす受診が複数回あった試験では, 4 パーキンソン病におけるプラセボ反応 その期間内の受診で得られたスコアの平均値を用いた。 プラセボ反応率への影響因子の解析 我々は,いくつかの背景因子(主に試験に関連する因 子と,主に患者に関連する因子)がポジティブ・プラセ ボ反応率を決定しているとの仮説を立てた。患者関連因 子として,ベースライン時の UPDRS Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)のス コアに加え,性別,年齢,試験登録時の PD 罹病期間, Hoehn and Yahr(HY)分類を検討した。UPDRS につい ては,すでに実施された因子分析に基づき,各項目のス コアを合計して総運動スコアを求め,また振戦,固縮, 動作緩慢,歩行の 4 つの臨床領域のサブセット項目のス コアを合計した 9 。試験関連因子は,内科的介入 vs 外科 的介入,プラセボ割り付け率 50%未満 vs 50%,疾患重 症度の適格基準(対症療法を必要としない PD 患者, motor fluctuation はないが対症療法が必要な PD 患者, motor fluctuation があり対症療法が必要な PD 患者)を比 較・検討した。個々の適格/除外基準,特に許可された 併用薬については,あらかじめ規定された疾患重症度の カテゴリー間およびカテゴリー内において異なっていた。 統計解析 ベースライン時の被験者特性は平均値± SD(範囲)ま たは頻度(割合)で要約し,試験ごとに示した。試験特 性は表にまとめた。試験ごとに,全体ならびに各経過観 察時点で生じたポジティブ・プラセボ反応の発生率(も しくは割合)を計算した。ポジティブ・プラセボ反応が 発生する時間的パターン,および被験者特性とポジティ ブ・プラセボ反応との関連性は,モデルに含まれる試験 特性(固定作用)で補正し,二元反復測定用の一般化推 定方程式(generalized estimating equation; GEE)と各患者 データを用いて検討した 10 。結果はオッズ比(odds ratio; OR)と 95%信頼区間(confidence interval; CI)で示した。 試験特性については層別解析を行い,各試験のポジティ ブ・プラセボ反応が生じるオッズをプールし,プールさ れた加重オッズをカテゴリー間で比較した。個別データ による GEE モデルで得られたオッズは,対応する試験の サンプルサイズの平方根で加重した。疾患重症度(パー キンソン症候群に対する対症療法が必要ない患者 vs motor fluctuation はないが対症療法が必要な患者 vs motor fluctuation があり対症療法が必要な患者)およびプラセ ボ割り付け率の解析では,2 つの試験を除外した。すな わち,1 つは coenzyme Q10 に関する試験で,プラセボ反 応者がおらず 11 オッズ比が 0 であったため,もう 1 つは 神経外科的試験で,HY 分類が示されていなかったため 12 , 解析から除外した。介入方法に関する解析では,3 つの 外科的試験を 1 つに統合したが,coenzyme Q10 試験につ いてはプラセボ反応者がいなかったため除外した。解析 はいずれも,統計パッケージ・ソフトウエア SAS 9.1.3 を 用いて行った。統計学的有意水準は 0.05(両側)に設定 した。 結 果 評価対象試験 対象とした 11 件の試験 11-21 のプラセボ群の患者は 917 例で,うち 858 例が本解析の参加基準を満たしていた (Table 1) 。除外された患者のうち,34 例はベースライン 時の UPDRS Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)のスコアが 5 ポイント未満で あったため,また 18 例は規定の期間範囲に十分な経過観 察データが得られていないため,さらに 7 例はベースラ イン時の UPDRS Part Ⅰ Ⅰ Ⅰ (運動)のスコアが欠落していた ため除外した。 対症療法を必要としない患者を対象とした試験は 3 件 であった〔セレギリン/トコフェロール,coenzyme Q10, レボドパ(L -ドパ) 〕 。Motor fluctuation はないが対症療法 を必要とする患者を対象とした試験は 2 件であった(ロ ピ ニ ロ ー ル 単 独 投 与,rasagiline 単 独 投 与 ) 。Motor fluctuation がある患者を対象とした試験は 6 件であった (エンタカポン,ロピニロール,および 3 件の外科的神経 移植試験) 。内科的試験では,実薬と外見上同一の錠剤 ないしカプセル剤がプラセボ群に使用された。外科的試 験では,プラセボ群には頭蓋は穿孔するものの硬膜は貫 通させない模擬手術を行い,実際の細胞移植は実施され なかった。 ポジティブ・プラセボ反応率 総ポジティブ・ プラセボ反応率は 16%(134/858 例)で, 全試験を通じて 0 ~ 55%の範囲内にあった(Table 2) 。 プラセボ反応率が最も低かったのは,パーキンソン症候 群への対症療法を必要としない患者を対象に疾患修飾を 検討した試験であった(0%,9%および 11%) 。Motor fluctuation がある PD 患者に対する内科的試験において, プラセボ反応率はこれよりも高かった。Motor fluctuation 5 C.G. Goetz et al.
doi:10.1002/mds.21894 pmid:18228568 fatcat:tjffymj43jeohbjsrkl24qkzem