A case of hypoglycemia caused by cibenzoline intoxication in a patient with rapidly progressive glomerulonephritis
抗糸球体基底膜抗体型急速進行性糸球体腎炎を契機にシベンゾリン中毒を来した遷延性低血糖の1例

Daisuke Takagi, Yujin Furukawa, Maki Murata, Makoto Takaki, Yujiro Nakayama, Tadashi Kikuchi, Yasuhiro Gushima, Junichi Maehara
2018 Journal of the Japanese Society of Intensive Care Medicine  
J Jpn Soc Intensive Care Med 2018;25:43-4. はじめに コハク酸シベンゾリン (cibenzoline succinate, CZ) は Vaughan-Williams 分類でⅠa 群に分類される抗不 整脈薬である。CZ は濃度依存的に低血糖を引き起こ antiglomerular basement membrane antibody-mediated rapidly progressive glomerulonephritis,抗 GBM 抗体 型 RPGN) を契機に,CZ 中毒による遷延性低血糖を来 した 1 例を経験したので報告する。 症 例 症例:71 歳,女性。身長 138 cm,体重 52.3 kg 。 既往歴:2 型糖尿病 (HbA1c 6.5%) ,発作性心房細 動。 内服歴:メトホルミン錠 250 mg 2 錠分 2,CZ 錠 100 mg 2 錠分 2 など。 現病歴:入院 1 週間前から血尿を認め尿路感染症の 診断でレボフロキサシン錠 250 mg 2 錠分 2 による加
more » ... となった。 来院時現症:JCS 20,血圧 132/61 mmHg,脈拍 79 / min・整,体温 36.5℃,呼吸数 25 /min,SpO2 96% (室 内気) ,身体診察で異常所見なし。 来院時検査所見:心電図,胸部 X 線,全身 CT は特 記所見を認めず。血液検査で急性腎機能障害 (Cr 3.18 mg/dl) ,低血糖 (34 mg/dl) ,炎症所見 (WBC 11,600 / μl,CRP 13.6 mg/dl) を認め,尿検査では膿尿と血尿 を認めた。 入院後経過:低血糖による意識障害と診断した。ブ ドウ糖液を静注したところ,血糖は一旦上昇し意識障 害も改善した。その後,ブドウ糖液持続投与を行った が,低血糖を繰り返し,頻回にブドウ糖液追加静注に よる補正を必要とした。感染による相対的副腎不全の 可能性が否定できなかったため,ヒドロコルチゾン投 与を開始した (Fig. 1) 。低血糖の鑑別目的に血中の CZ,インスリン,C-ペプチド濃度を測定した。CZ 濃 度は 2,772 ng/dl と異常高値であり,インスリン値は 44.5μU/ml,C-ペプチド値は 34.9 ng/ml とともに高 値を呈していた。CZ とメトホルミンは中止し,翌日 には血糖は安定し,ブドウ糖液点滴を漸減しながら経 口栄養を開始した。抗菌薬加療で膿尿の改善を認めた が,血尿は増悪し腎機能も改善を認めなかった。臨床 病型から RPGN と考え,各種抗体を測定し,抗好中球 細胞質抗体および抗 GBM 抗体の出現を認めた。腎生 検は半月体形成性壊死性糸球体腎炎の所見であった。 以上の結果より,本症例は尿路感染症に合併した抗 GBM 抗体型 RPGN による急性腎傷害を契機に CZ 中毒 となり,メトホルミン使用も相まって低血糖から意識 抗糸球体基底膜抗体型急速進行性糸球体腎炎を契機にシベン ゾリン中毒を来した遷延性低血糖の 1 例 髙木 大輔 古川 由人 村田 真紀 髙木 誠 中山雄二朗 菊池 忠 具嶋 泰弘 前原 潤一 Key words: ① cibenzoline intoxication, ② hypoglycemia, ③ anti-GBM (glomerular basement membrane) antibody-mediated RPGN (rapidly progressive glomerulonephritis) 社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院救急総合診療センター (〒 861-4193 熊本県熊本市南区近見 5-3-1)
doi:10.3918/jsicm.25_43 fatcat:enxp6oug7jex7mhhdqkmh7qopi