Effects of Crystallization on Internal Stress of ITO Films
アークイオンプレーティング法によるITO膜の内部応力に及ぼす結晶化の影響

Hiroyasu KOJIMA, Nagahiro SAITO, Osamu TAKAI
2012 Journal of The Surface Finishing Society of Japan  
速 報 論 文 1 .緒 言 透明導電膜の ITO 膜 (SnO 添加 In O 膜) は,広く様々な 製品に使われている。フラットパネルディスプレー (FPD) や 太陽電池用が大きな市場であるが,この他にも車両用フロン トガラス,冷蔵ショーウインドウなどの防曇窓ガラスの透明 ヒーターや帯電防止膜,電磁遮蔽膜などがある。成膜手段と しては,電子ビーム蒸着やスパッタリング法が ITO 膜の主 たる方法である。 大面積基板に対してはスパッタ法が有利であり,多くの生 産に取り入れられている。ただしスパッタ法では,スパッタ 粒子の持つ高エネルギーによるダメージがあり,低インピー ダンス法などが取り入れられているが ,さらに低ダメージ 化の要求がある。また,In の価格高騰から代替材料の開発 も盛んである , 。 近年,ディスプレーや太陽電池などの大面積化,またフレ キシブル化にともない,ガラス基板の薄型化やプラスチック 基板の利用が広がりつつある。基板の剛性が低くなるために 低比抵抗の膜を低温で高速に成膜でき,かつ内部応力の小さ い成膜方法が必要となる。そのため成膜手段として,高速成
more » ... 能な高密度プラズマガン (HDPE:High Density Plasma Evaporation) を用いたアークイオンプレーティング法がある。 プラズマガンは DC アーク放電を用い,ホローカソード型で あり圧力勾配を付けたガンである。アークイオンプレーティ ング法により堆積した ITO 膜の内部応力に関しては,実用 的に大変重要な特性であるが,要因が複雑であり報告例が少 ない。また,ITO 膜は低比抵抗化のために,従来から高温 (300 ℃以上) の基板にて成膜を行うことが多く,結晶化され た膜を使うことが一般的であった。 本研究では,低温にて ITO 膜を成膜し,ITO 膜の要素と して重要になる膜厚,SnO 量を変えて内部応力を調べると ともに,結晶化の挙動を解析することで,低応力の ITO 膜 作製の成膜条件を検討することを目的とした。 2 .実験方法 1 m 角 3 mm 厚のガラス基板を用い,ロードロックチャン バーで予備加熱し,オーバーランチャンバーを備えた蒸着装 置にて HDPE ガン 2 台を用いて行った。ガラスは,大面積 化の検討を同時に行うために,1 m 角の大きさを用いた。基 板と蒸着源の距離は 0.7 m である。電流は 250 A,放電電圧 70 V であった。焼結した ITO ペレットを用い,SnO 量は, 4 wt% から 30 wt% まで 6 種類用いた。基板加熱は,ロード ロックチャンバーにて行い,予備基板加熱温度は,無加熱か ら 180 ℃まで行った。10 Pa まで真空に排気し, ロードロッ クチャンバーから基板を移動して蒸着チャンバーにて,蒸着 を行った。蒸着時に導入する O 圧力は, 圧力コントローラー により,2 × 10 Pa に調整した。膜厚は,触針式の膜厚計 (Sloan,Dektak3) で測定した。膜の断面観察には走査電子顕 微鏡 (Hitachi, S-900) , 結晶構造解析には X 線回折装置 (Rigaku, RU-200RADB) を用いた。内部応力は,50 μm 厚のマイクロ シートガラスに成膜し,そのたわみ具合によって大きさを測 る片持ち梁法によって行った 。 3 .実験結果および考察 図 1 は,内部応力の SnO 量と膜厚の関係を示したもので ある。内部応力は,すべて圧縮応力であった。4 種類の SnO 量に対して,膜厚の増加とともに内部応力は増加した。膜厚 が 0.5 μm ~ 0.7 μm にかけて,内部応力は飽和する傾向を 持っていた。また,図 2 は,同じ膜厚の SnO 量について比 較するために,SnO 量を横軸に取って表した図である。同 じ膜厚に対して SnO 量が多くなるほど,明らかに内部応力 は小さくなる傾向を持っていた。 我々の以前の検討結果から ,
doi:10.4139/sfj.63.272 fatcat:wbffmm77uzawngglyifwyy3ave