Successful Surgical Treatment for Intractable Pancreatic Ascites in Patients with Poor General Condition: Report of 3 Cases
手術により救命しえた全身状態不良に陥った難治性膵性腹水の3例

Keiko Kamei, Ippei Matsumoto, Kohei Kawaguchi, Masataka Matsumoto, Takaaki Murase, Shumpei Satoi, Takuya Nakai, Yoshifumi Takeyama
2017 The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery  
手術により救命しえた全身状態不良に陥った難治性膵性腹水の 3 例 亀井 敬子 1) 松本 逸平 1) 川口 晃平 1) 松本 正孝 1) 村瀬 貴昭 1) 里井 俊平 1) 中居 卓也 1) 竹山 宜典 1) 1) 近畿大学医学部外科学講座肝胆膵部門 保存的治療が奏効せず,全身状態不良となった難治性膵性腹水 3 症例に対し手術を行い,症状改善し, 救命しえた.手術時期,適応,術式選択につき検討したので報告する.症例 1 は 58 歳の男性で,アルコー ル性慢性膵炎フォロー中の患者で,CT にて膵管破綻部は不明であったが膵頭部膵石,尾側主膵管拡張を 認め,Frey 手術を施行した.症例 2 は 50 歳の男性で,アルコール性急性膵炎フォロー中の CT にて門脈直 上の膵頸部に主膵管から膵前面に連続する膵管破綻部を認め,Bracey 手術を施行した.症例 3 は 71 歳の 男性で,アルコール性急性膵炎患者の膵管造影で,膵頭部囊胞を介し造影剤の腹腔内への漏出を認めた. 亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.全例で術前炎症反応上昇,低アルブミン血症,貧血を認めた. 2
more » ... ,膵液瘻を認めた.保存的治療に抵抗性の膵性腹水は全身状態の悪化を招くため, 時期を逸さず積極的な外科治療を考慮すべきである.手術に際し,個々の病態に応じた術式選択が極めて 重要である. キーワード:膵性腹水,Bracey 手術,Frey 手術 はじめに 膵性腹水は,膵管の破綻により膵液が腹腔内へ漏出することに起因する液体貯留状態と定義されてい る 1 ) .報告例は散見されるが,日常的に遭遇する機会は少なく,その治療方法,特に保存的治療不応例に 対する外科手術の適応,時期,術式などについての明確な指針は示されていない.今回,我々は保存的治 療が行われたが奏効せず,全身状態不良に陥った難治性膵性腹水症例に対し,時期を逸することなく手術 を行い,症状改善し,救命しえた 3 症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する. 症 例 症例 1:58 歳,男性 主訴:心窩部痛 既往歴:特記事項なし. 現病歴:心窩部痛を主訴に近医を受診し,アルコール性慢性膵炎および腹水と診断された.保存的に治 療されたが,腹水が増加,全身状態も悪化し,第 14 病日に紹介となった. 転院時検査所見:炎症反応の著明な上昇,貧血,肝機能障害,低アルブミン血症,血清アミラーゼ値の 上昇を認めた(Table 1) .腹水中アミラーゼ値は 27,800 IU/l で膵性腹水と診断した. 腹部造影 CT 所見:腹腔内に大量の腹水を認めた.膵頭部に膵石を認め,尾側主膵管の拡張を認めたが,
doi:10.5833/jjgs.2016.0207 fatcat:4voe2tw5lvbyxm4vjnoorkyp4e