めっき添加剤と電極表面―水溶性高分子の作用機構に迫る―複合めっきの粒子共析における界面活性剤の役割
The Role of the Surfactant during Composite Plating Process

Hidetaka HAYASHI
2009 Journal of The Surface Finishing Society of Japan  
.はじめに めっき浴に微粒子を分散させて電解を行うと,陰極で金属 の析出反応が進行すると同時に粒子が取り込まれ,金属皮膜 内に粒子が分散した複合めっき皮膜が得られる。取り込まれ た粒子の機能と金属皮膜の組み合わせにより,金属だけでは 得られない新規な機能を持った材料が得らえる。たとえば, 耐摩耗性にすぐれた炭化ケイ素 (SiC) をニッケル皮膜に共析 させることにより,耐食性,熱伝導性,耐摩耗性を兼ね備え た皮膜が得られ,エンジンのシリンダー内壁へのコーティン グに応用されている。可能性としては,粒子と金属 (もしく は合金) の組み合わせは無限であるが,無電解めっき法を含 む湿式めっき法による製造に限れば,目的の機能を発現する 粒子がめっき浴と親和性が高いとは限らないため,安定な状 態で製造プロセスを維持してゆくためには,めっき浴に粒子 を安定に存在させるための操作が必要になる。このような目 的には通常界面活性剤が用いられるが,イオン強度が極めて 高いめっき浴の場合には,適切に使用しないと粒子の分散性 が維持できなかったり,めっきプロセス自体が阻害される場
more » ... 阻害される場 合もある。このことをふまえ,複合めっきにおける界面活性 剤の作用機構について述べる。 2 .複合めっきの過程 図 1 は,めっき浴に粒子が投入されてから,電解により複 合めっき皮膜が形成されるまでの一連の過程を示す。粒子が 皮膜に取り込まれるまでには次の 4 つの段階を経ると考えら れる。 ①粒子とめっき液成分との反応 ②粒子の陰極への移動 ③粒子の陰極への付着 ④金属皮膜の成長および粒子の皮膜への取り込み 複合めっき浴は,一部の例外を除いてかく拌を停止すると粒 子が沈降し,めっき浴から分離してしまう本質的には不均一 系であり,浴の取り扱いの点で通常のめっき浴よりもハード ルが高いのは否めない。如何にして固体である分散粒子と めっき液の界面を制御して浴の安定性を維持するかというこ とが複合めっきプロセスの成否に関わってくる。 2.1 粒子とめっき液成分との反応 めっき浴に粒子を投入すると,新たな固液界面が生じ,こ こでさまざまな反応が起こる。よく知られている例として, 二酸化チタンのような酸化物粒子をめっき浴 (たとえば硫酸 銅浴) に投入した場合を考える。酸化物は,水と接するとそ の固有の性質を反映して酸または塩基として機能する。ある 特定の pH の溶液に対しては,酸化物は酸でも塩基でもない 中性の物質として振る舞うが,それよりも pH が低い溶液に 対しては塩基として振る舞い,溶液からプロトンを吸着する。 逆に pH が高い溶液に対しては,プロトンを与える。このよ うな界面での反応の結果,粒子表面にはプロトンの過不足が 生じるため, 帯電することになる。 なお, めっき浴中には, めっ き金属イオンや対イオンとしての種々のアニオンなども含ま れているので,帯電と同時に粒子へのそれらのイオンの吸着 も起こるため厳密には固体酸塩基としての性質だけで帯電状 態が決まるわけではない , 。 また,条件によっては粒子の凝集が起こるため,めっき浴 での粒子の状態を把握するためには,帯電状態のほかに,粒 子への吸着イオンの種類と量,めっき浴内での粒子の粒度分 複合めっきの粒子共析における界面活性剤の役割 林 秀 考 a a 岡山大学 大学院自然科学研究科 (〒 700-8530 岡山県岡山市北区津島中 3-1-1)
doi:10.4139/sfj.60.766 fatcat:mhlxwiixdrgntldrz4t72bhpfe