Current Status of Nonoperative Management (Watch and Wait) for Rectal Cancer

Tsuyoshi Konishi
2020 Nippon Daicho Komonbyo Gakkai Zasshi  
近年,直腸癌に対する術前化学放射線療法,さらに術前全身化学療法を加えるレジメンの開発により, 病理学的完全奏効に至る症例が増えている.このような症例にも手術は標準治療して施行されてきたが, 高率な合併症やストマ,さらに排便障害をはじめとする後遺症により,患者の QOL は著しく低下する. 近年,術前治療後に臨床的完全奏効が得られた症例に対し,早急な手術を回避し経過観察する Watch and Wait 療法が提唱され,欧米を中心に安全かつ QOL の高い有効な治療法として注目されている.手術を前 提としてきたこれまでの概念を大きく変える治療法であり,本邦においても正しい知識の普及と,適切な 臨床導入が求められる.本項では直腸癌に対する Watch and Wait 療法の適応や成績,今後の展開につい て解説する. :直腸癌,術前化学放射線療法,Watch & Wait,非手術療法,臓器温存 近年直腸癌に対する術前化学放射線療法 (Chemoradiotherapy, CRT) ,さらに術前全身化学療法を加 えるレジメンの開発により,病理学的完全奏効 (pathological
more » ... 効 (pathological complete response, pCR) に至る症例が増え ている.このような症例にも手術は標準治療とされ 施行されてきた.しかし,直腸癌手術は合併症や後 遺症が高頻度に伴い,術後の Quality of life(QOL) の観点からは患者への身体的, 精神的負担が大きい. 肛門機能障害はほぼ必発であり,排尿機能障害,性 機能障害も高率に合併する.縫合不全などの重篤な 合併症は入院期間を遷延化させ,生命予後を悪化さ せる可能性が指摘されている.永久・一時的人工肛 門は患者の QOL を著しく悪化させる. 近年,術前 CRT 後に臨床的完全奏効 (clinical complete response, cCR)に至った症例に対し,早急な 手術を回避し経過観察する Watch and Wait 療法が 提唱され,欧米を中心に安全かつ QOL の高い有効 な治療法として注目されている (図 1 ) .手術を前提 としてきたこれまでの概念を大きく変える治療法で あり,本邦においても正しい知識の普及と,適切な 臨床導入が求められる.本項では直腸癌 CRT 後の Watch and Wait 療法について解説する. Stage Ⅱ-Ⅲ下部直腸癌において,局所再発は重要 な課題である.全直腸間膜切除(total mesorectal excision, TME) だけでは局所再発を制御することは 難しく,このため欧米では複数の臨床試験を積み重 ね,術前化学放射線療法 (neoadjuvant chemoradiotherapy, CRT)を標準治療して確立した.本邦でも CRT を導入する施設が年々増加している.CRT 後 は病理学的完全奏効 (pathological complete response, pCR)に至る症例が 15 -20%程度認められる 1) .さ らに最近では,全身化学療法を加えた術前治療レジ メンの開発により, 30%を超える pCR 率も報告され ている 2,3) .このような完全奏効の症例においても, 切除手術が直腸癌の標準治療であることは疑いのな い事実である.しかしながら,患者にとって直腸癌 の手術は大きな代償を伴う (表 1 ) .肛門温存手術を 行っても排便障害は必発であり,とくに下部直腸癌 に対する CRT 後の ISR では severe な排便障害が 5 割に達する 4) .神経温存 TME 後の排尿,性機能障害 は高率に発生し,JCOG0212 における術後一過性排 尿障害,術前健常者における術後性機能障害の割合 はともに約 6 割に達する 5,6) .下部直腸癌の手術では 高率に人工肛門が造設され,これに伴う QOL 低下
doi:10.3862/jcoloproctology.73.433 fatcat:nnbkzfpli5earnuvayuf32hmcq