Soft Tissue Profile Patterns in Mandibular Prognathism Obtained Using a Self-organizing Map
自己組織化マップによる骨格性下顎前突患者の軟組織側貌パターンの抽出

CHIKAYO INOUE, SACHIO TAMAOKI, HIROYUKI ISHIKAWA
2009 The Japanese Journal of Jaw Deformities  
外科的矯正治療を必要とする骨格性下顎前突患者は,機 能的改善に加えて側貌の審美的改善を望む場合が多く 1⊖3) , 初診時の軟組織側貌の特徴を把握することが重要 4, 5) であ る。 これまでに,外科的矯正治療患者の軟組織側貌の特徴と して,オトガイの突出 6) ,中顔面の陥凹 7) ,下顔面高の増 大 8) ,上唇や下唇の翻転 9) ,鼻唇角の狭小化 10) などが挙げ られている。これらの個別の特徴は,相互に関連してあら われることも多いため,初診時に特徴の組み合わせである パターンとして,側貌の形態を評価することが望まれる。 Arnett ら 11) は,骨格性下顎前突の軟組織側貌の異常を, いくつかの特徴の組み合わせで包括的に捉える方法を提案 し,Class Ⅲの軟組織側貌の 3 つのパターンを提示してい る。この方法は,個別に抽出される特徴を一連のパターン として認識できるため,軟組織側貌の異常をつかみやすい ものと考えられる。しかし,チークラインなどを考慮した Class Ⅲの軟組織側貌パターンを視覚的に示した報告はそ
more » ... パターンが存在しているのかも未だ不明である。さらに, 外科的矯正治療後にオトガイの突出感や中顔面の陥凹感が 残りやすいパターンの存在 12⊖15) が示唆されているが,軟組 織パターンと硬組織形態との関連が明らかでないため,パ ターンと移動術式との関係にも不明な点が多い。 一方,Kohonen 16) により提案された自己組織化マップ (self-organizing map:以下 SOM と略す)は,ファジィ 理論を利用することで複雑な情報を処理できるニューラル 自己組織化マップによる骨格性下顎前突患者の 軟組織側貌パターンの抽出 井 上 知 加 予 玉 置 幸 雄 石 川 博 之 日顎変形誌 2009 年 井上知加予,他 ネットワークのひとつである。その特徴は,複数の計算ユ ニットを配置したマップと呼ばれる平面に,入力情報を繰 り返し提示することで,ユニット群が自動的に入力情報の 持つ特徴を学習し,各ユニットにバーチャルパターンを作 成できることにある。これは,従来のクラスター分析で行 われるような入力データの分類後に各グループの平均を代 表的なパターンとする方法と異なり,先に複数のバーチャ ルパターンを抽出し,このパターンとの類似性に基づいて 入力データの分類を行うことを可能にする。これらの特徴 による SOM の臨床応用として,脈波波形のパターン解 析 17) や眼底の画素データ 18) を分類することも行われてい る。 そこで本研究では,外科的矯正治療を必要とした骨格性 下顎前突患者について SOM を用い,初診時軟組織側貌パ ターンの視覚的な抽出をこころみた。さらに,抽出された パターンの特徴と硬組織形態との関連性について検討し た。 1.資料 1)外科的矯正治療患者の資料 福岡歯科大学医科歯科総合病院に来院し,骨格性下顎前 突の診断のもと外科的矯正治療を行った成人女性 90 名を 対象とした。これらは,初診時年齢が 18 歳以上で 40 歳未 満 の も の,BMI(Body mass index) が 25 以 下 の も の, 著しい顔面非対称の認められないものとし,初診時の側面 頭部 X 線規格写真を資料とした。なお,初診時平均年齢 は 22.6 ± 4.2 歳であった。 2)顎変形を伴わない個性正常咬合者の資料 同病院で矯正単独治療を行った成人女性のうち,動的治 療終了時の歯列模型上で,大臼歯関係が両側ともに Angle Ⅰ級で,オーバージェットおよびオーバーバイトがともに +1.5mm から+4.5mm の範囲にあり,また動的治療終了 時のセファロ分析の結果,ANB 角,FH 平面に対する上 顎中切歯歯軸傾斜角,下顎下縁平面に対する下顎中切歯歯 軸傾斜角が,飯塚ら 19) ,長岡ら 20) ,山内ら 21) のいずれかの
doi:10.5927/jjjd.19.171 fatcat:emy6xsy5obgqbjyfknn632cuma