History of Nanoindentation Tester in Japan
日本におけるナノインデンテーション試験機の歴史

Yukimitsu IWANAGA
2013 Journal of the Japan Society for Precision Engineering  
1.は じ め に 数 μm オーダーの機能性材料や電子部品,また厚みが数 μm 以下の薄膜,表面層の硬さ計測には,従来からの押込 み硬さ(マイクロビッカース硬さ等)では,その試験力や 測定方法により適用が難しい. このため,1985 年に,従来の方法とは異なり,圧子押 込み時の試験力と押込み深さを計測し,その曲線から微小 硬さを求めるナノインデンテーション試験機が商品化され た.2002 年には ISO 14577-1 1) として規格化され,多くの 試験機が開発されており,現在では,薄膜から実用材料, 金属からゴム,プラスチックまで本試験方法が適用されて いる. 2.ナノインデンテーション試験 最新のマイクロビッカース硬さ試験機では,最小試験力 10 mN 以下を実現した装置もあるが,ビッカース硬さを 求めるためには,試料表面に形成されたくぼみの対角線長 さ計測が必要なため,光学顕微鏡ではその測定に限界があ る.また,プラスチックやガラスに適用した場合,くぼみ の大きさが測定し難いという問題がある. このため,図 1 に示すように試料表面に圧子を押込む
more » ... 次計測し,その関係から試 料の硬さや材料特性を評価する"計装化押込み試験"が考 案された. 2002 年には,ISO 14577-1「計装化押込み硬さおよび 材料パラメータ 第一部:試験方法」として規格化されて いる. 一般的に計装化押込み試験において,押込み深さが概ね 1 μm 以下の試験をナノインデンテーション試験と称して いるが,ISO 14577-1 においては,押込み深さが 0.2 μm 以 下の試験をナノレンジと定義している. 3.ISO 14577-1:計装化押込み硬さおよび 材料パラメータ 一般的な試験力 F と押込み深さ h の曲線を図 2 に示す. このデータから ISO 14577-1 Annex A では以下の硬さ と材料パラメータの求め方が記述されている. (1)マルテンス硬さ HM (2)試験力深さ曲線勾配から求めるマルテンス硬さ HMs (3)押込み硬さ HIT (4)押込み弾性率 EIT (5)押込みクリープ CIT (6)押込み緩和 RIT (7)押込み仕事率 ηIT 硬さのみならず,弾性率や仕事などの材料パラメータが 定義されていることが特長である. 4.東京大学における最初の試作 1968 年,佐田らは 2) ,東京大学において化学天秤のレバ ー片側にダイヤモンド圧子を付け,他方に電磁力をかける コイルとダンパーをつけた試作機を作成し,10 mgf(0.1 mN)の負荷によるくぼみをシリコンやゲルマニウム試料 表面につけ電子顕微鏡でその大きさを測定している. 5.理化学研究所における試作 1983 年,佐田らは,理化学研究所において東京大学に おける構想を発展させた図 3 の基本構成をまとめた. これは,負荷方式に電磁コイル,変位測定に差動トラン スを採用し,試験力と押込み深さを連続的に測定できるも のであった. この案を元に,理化学研究所は(株)島津製作所に試作を 依頼,1984 年に図 4 の試作機を製作した.この試作機の 試験力範囲は 10 mgf(0.1 mN)∼50 gf(490 mN) ,押込 み深さの測定範囲は 0.01∼5 μm である. 電磁コイルに流れる電流と差動トランスの出力電圧を AD 変換してマイクロコンピュータで処理することで硬さ
doi:10.2493/jjspe.79.1200 fatcat:ggxwqmv6n5b2rp6biwsjcrayfq