Synthesis and Structure of Novel Zeolite Obtained by Topotactic Condensation Using Nano-precursors
層状ケイ酸塩を積み木のように用いて創る新規ゼオライト CDS-1
Takuji IKEDA, Yasunori OUMI
2006
Shinku
. は じ め に ゼオライトは触媒,吸着剤,モレキュラーシーブ,建築材 など多様な分野で用いられている無機多孔質材料で,現在 161種類の異なる骨格構造が知られている.その多くは Si, Al, P, O などを主な骨格構成元素が共有結合により結合し, 1 nm 未満の規則的な細孔構造を有する. ところで,骨格の組成が Si, O から構成される高シリカゼ オライトは,耐熱性に優れ疎水的な性質を有していることか ら,アルコール分離や炭化水素の吸着・分解等に用いられて いる.また最近では,高シリカゼオライトであるシリカライ トを触媒としてナイロンの原料となる e カプロラクタム合 成のための気相ベックマン転位 1) が実用化され,従来のゼオ ライト触媒とは全く性質の異なる反応機構であるばかりでな く,既存の方法で問題になっていた硫安を副生しないことか ら,低環境負荷プロセスとして大きな注目を集めている.こ のような観点から,新規ゼオライトによる新規プロセスの開 発への大きな期待から,世界レベルでは精力的に新規合成の 研究が為されている.
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... 最近報告 されたものの多くは高シリカゼオライトであり,有機分子を 構造規定剤(SDA: Structure Directing Agent)を用いた水 熱合成法が用いられている.今日では,この方法が主流とな ってきており,メリットとして SDA を用いることで大きな 細孔が得られることが挙げられる.しかし,合成過程での SDA の役割が不明瞭であり,明確な骨格構造の設計指針は 未だ確立していない.また SDA の設計・合成が非常に複雑 でコストも高いことがネックとなっている.他にも要因は考 えられるが,これらのことが最近見いだされた新規ゼオライ トが実用化されない原因となっている. この背景から我々は,合成が比較的容易な 1 次元,2 次元 の構造を有するケイ酸塩化合物とゼオライトとの間にある構 造類似性に着目し,ケイ酸塩化合物を前駆体に用いた新規ゼ オライト合成の可能性について研究してきた.ケイ酸塩化合 物を前駆体に用いたゼオライト合成はこれまでに幾つか報告 されている.最初の例である層状ケイ酸塩 PREFER(Si 36 O 68 (OH) 8 ・(C 9 H 20 N 2 ) 4 ) 2,3) は,粉末結晶を焼成することで 既知ゼオライトである Ferrierite(Si 36 O 72 ) [FER 型ゼオラ イト頭 3 文字は International Zeolite Association (IZA) が定める骨格構造を表すコード(Framework Type Code) ] に変化する.この PREFER の結晶構造は,焼成して得られ た FER 型構造から類推され骨格モデルのみが提示された が,また完全な構造データはない.その後 MWW 型ゼオラ イト(MCM 22, ITQ 1Si 72 O 144 )は硼素含有層状シリケー ト EBR 1 と骨格構造が相似であることが示されている 4) . 層状ケイ酸塩 MCM 47(Si 18 O 36 (OH) 2 ・(C 14 H 30 N 2 )・2H 2 O) 5) ]でもそれと骨格構造が類似したマイクロポーラスに変 化することが報告されている. 我々は,これまでに独自で合成した層状ケイ酸塩 b HLS (Na 2 [Si 10 O 20 (OH) 4 ]・[(CH3) 4 N] 2 ・5.53H 2 O) 6) をトポロ ジーの類似した SOD 型ゼオライト(Na 6 [Si 6 Al 6 O 24 ] )への 固相反応法による変換 7) に成功している.しかし,促進剤 と して Al 源の添加が必要なため,反応中での変換機構が不明 瞭という問題が残っていた.この b HLS の合成系列を更に 詳細に検討した結果,新規な層状ケイ酸塩 PLS 1 ( Pentagonal-cylinder Layered Silicate) の合成に辿り着き,その 構造解析にも成功した.PLS 1 の結晶構造が明らかになっ たことで,この骨格構造をナノパーツに見立てて積み木細工 的に積み上げることを着想し,新しい高シリカゼオライト CDS 1 (Cylindrical Double Saw-edged structure) 8) の合成を 実証し,さらに構造も詳細に明らかにした. 偶然にも本研究とほぼ同時期に,Marler ら 9) によって層状 ケイ酸塩 RUB 18(Na 8 [Si 32 O 64 (OH) 8 ]・32H 2 O)にアルキ ルアンモニウム塩を層間に挟み込んだものを前駆体に用い新 規 ゼ オ ラ イ ト RUB 24 ( RWR 型 Si 32 O 64 ) が , ま た Zanardi ら 10) に よ っ て 層 状 ケ イ 酸 塩 Nu 6 ( 1 ) [ Si 24 O 48 (OH) 4 ・C 40 N 8 ]から新規ゼオライト Nu 6(2)(NSI 型 Si 24 O 48 )が報告された.これらの例では,構造変化の前後 で幾何学的相似の関係が成り立っているのが特徴である.と くに,層状ケイ酸塩の骨格パーツを使って,その表面に分布 する水酸基同士を脱水重縮合させ積み木細工的に積み上げて いくことで,何ら添加物を加えることなくと層状ケイ酸塩が
doi:10.3131/jvsj.49.219
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