Suppression of Silver Dissolution by Contacting Different Metals during Copper Electrorefining
異種金属接触による銅電解精製時のAg溶解抑制

Takahito KASUNO, Atsushi KITADA, Kimihiro SHIMOKAWA, Kuniaki MURASE
2014 Journal of MMIJ  
1.緒 言 銅の製錬工程において,最終的な精製には電解プロセスが用 いられている。ここでは,陽極 ( アノード ) の粗銅中の銅を Cu 2+ イオンとして酸化溶解させて,陰極 ( カソード ) に還元析出させ ることでその純度を高めている。このとき,粗銅中に不純物とし て含まれる金や銀といった貴金属はアノードスライムとして沈殿 することで銅から分離される。しかし,実際にはこれらの貴金属 はアノードスライムに完全には移行せず,一部がカソードの電気 銅中に取り込まれ, 製品としての貴金属の回収ロスとなっている。 こういった金や銀の回収率を上げることがこのプロセス全体の利 益向上につながる。現在,世界の銅電解工場における電気銅中の 銀品位 ( 銀含有量 ) は 10 ppm 程度 1) である。仮にこれを 5 ppm にまで低減させることができれば,銅生産量 20 万トンクラスの 電解工場の場合,年間 1 トンの銀の増産につながると試算され る。平成 25 年 4 月現在の銀価格は 1 グラムあたり 94.5 円である ので,この増産は約 1 億円の増収に相当する。銀が電気銅中に取
more » ... れ,製品として回収されなくなる原因として,アノードス ライムのカソードへの機械的な「巻き込み」も考えられるが,筆 者らはあくまでも電気化学反応 Ag + + e → Ag を通した銀の取り 込み ( 還元析出 ) を想定している。銀を含むスライムは比重が大 きく,容易に沈殿するため,機械的な巻き込みの可能性が低いと 思われるためである。銀は銅より貴であることから,もし粗銅中 の金属銀がアノードスライムに移行せず,何らかの原因で電解浴 中に Ag + イオンとして溶解すれば,Ag + イオンに対する適当な 沈殿剤が電解液中にない限り, Ag + イオンとしてカソードに達し, 還元されて電気銅中に入ることになる。 現行の銅電解精製プロセスにおいて,アノード電位は +0.37 ~ +0.40 V vs. SHE である。Ag-H 2 O 系の電位 -pH 図 (Fig. 1) から考 察しても,この電位で粗銅に含まれる金属銀が電極反応 (Ag → Ag + + e) によって直接酸化溶解することは考えにくい。上記のア ノード電位の中央値 +0.385 V vs. SHE において金属銀と平衡して いる Ag + 活量を反応 Ag + + e = Ag のネルンスト式をもとに概算す ると 6.0×10 -7 程度となり,銀の原子量が 108 であることを考え ると,この濃度は 0.1 ppm 以下に相当する。実操業の電解浴の銀 濃度は 1ppm 程度であり,これより低いことから,アノードに含
doi:10.2473/journalofmmij.130.65 fatcat:hkfg2oewfvhbdhypamf3rspghi