Fisheries Science Vol. 75 No. 3
Fisheries Science Vol. 75 No. 3 掲載報文要旨

2009 Nippon Suisan Gakkaishi  
バンドウイルカによる漁業被害を軽減するためのピンガの効 果を調べるために,イタリア南部海域において,長さ 900 m のモノフィラメント製底刺網にピンガを付けた場合と付けない 場合の調査試験を行った。両方の網で計 58 回の操業につい て,網付近のイルカの目撃回数,イルカによる網の損傷,漁獲 重量および魚種組成を調べた。漁業水域におけるイルカの出現 数は 29 回の操業中 11 回(38)でした。ピンガを取り付け た網は,取り付けていなかった網より漁獲量が 28 多く,網 の損傷も 31 少なかった。 (文責 胡 夫祥) 75(3), 537 544 (2009) イカナゴ Ammodytes personatus の体密度と音速比,および 理論散乱モデルによるターゲットストレングスの推定 安間洋樹(北大フィールド科セ) , 中川 綾,山川 卓(東大院農) , 宮下和士(北大フィールド科セ) , 青木一郎(東大院農) 理論散乱モデルを用いたイカナゴのターゲットストレングス (TS)推定に必要な,海水に対する体密度比 g と音速比 h の測
more » ... なり,未成魚の平均 値は 1.021,成魚では 1.032 であった。成魚の音速比(1.016 1.023)には水温による変化が見られた。これらの結果をもと に,既存の理論散乱モデルを用いて 38 kHz と 120 kHz におけ る TS 推定を行った。その結果,それぞれの周波数において稚 魚と成魚の資源量推定に適用できる体長 TS 関係式と TS の周 波数差を得た。 75(3), 545 552 (2009) 琉球列島海域における 2 地域群を含むフエフキダイ属魚類 8 種の年齢に関わる生活史 海老沢明彦(沖水海研セ) ,小澤貴和(鹿大水) 沖縄海域に分布するフエフキダイ属 8 種の耳石輪紋数をブ レイクバーン法で計数した。濃茶色の輪紋は 10 月から 6 月 にかけ年 1 本形成された。成長式の推定に加え,卵巣の成熟 率,性比と年齢との関係を明らかにした。50 のメスが成熟 する年齢は,マトフエフキ,ホオアカクチビおよび L. ravus が最も低く 1~2 歳,ハマフエフキが最も高く 4 歳であった。 性転換でメスが 50 に減少する年齢はイソフエフキ沖縄地域 群が最も低く 3~4 歳,アマミフエフキが最も高く 7~8 歳で あった。標本中の最高齢はハマフエフキが最も高く 26 歳,ハ ナフエフキが最も低く 12 歳であった。 75(3), 553 566 (2009) 成長に伴って変化するクロマグロの形態的特徴と機能 田村優美子,木 力(近大農) クロマグロの形態的特徴は高速で遊泳するための重要な機能 を有している。本種の形態的特徴は成長に伴って変化するた め,成長過程で形態機能の発達が予想される。本研究では,本 種幼魚から若齢魚まで成長を追って形態的特徴を詳細に計測 し,さらに CFD(計算流体力学)解析を用いた流体力学的特 性の把握から,本種の遊泳に対する形態の機能性を調べた。成 長するにつれて抵抗係数は徐々に減少し,胸鰭が発生する揚力 は幼魚期に急激に増加した。これらの結果は,成長に伴って遊 泳するための形態機能が発達していることを示唆している。 75(3), 567 575 (2009) 東シナ海におけるマアジ仔魚の鉛直分布 広田祐一(水研セ中央水研) , 本多 仁(水研セ遠洋水研) , 阪地英男(水研セ中央水研) , 上原伸二(水研セ東北水研) 2003 年 2 月東シナ海において採集した方形枠ネット(口幅 2 m,高さ 1.5 m)試料により,マアジ仔魚の鉛直分布を検討 した。昼間その分布層は成長とともに変化した。体長 3.0 mm から 4.5 mm の仔魚は 10~20 m 層に多く,その後分布層は深 くなり,6.0 mm から 8.0 mm の仔魚では 30~40 m 層に多か った。9.0 mm 以上では分布層は浅くなり,0~10 m 層に多か った。また体長 5 mm 以上の仔魚で昼夜の鉛直移動が認められ た。昼間 30~40 m に多かった体長 6~8 mm の仔魚は,夜間 になると 30~50 m 層に留まる個体と 0~20 m 層に上昇する個 体に分かれた。 75(3), 577 584 (2009) 山口県西部吉見湾におけるマナマコ成体の季節分布パターン 山名裕介(北大院水) ,浜野龍夫(水大校) , 五嶋聖治(北大水) マナマコ成体の分布パターンを明らかにするため,山口県西 部吉見湾の潮下帯において,2 年間にわたってほぼ毎月の潜水 調査を実施した。結果,本調査地におけるマナマコ成体の分布 パターンには,明瞭な季節性が認められた。冬季から春季にか けて,海底や構造物の周りに多くの個体が分布する一方,夏季 から秋季にかけては,全ての個体が構造物上にだけ分布した。 このような季節性は,各付着位置における出現頻度と個体数の
doi:10.2331/suisan.75.752 fatcat:ltm7faxxavdxlkqgi2i26yzsam