The Action Plan for the New System of Incorporated Association

Kazuhiro YOSHIHARA
2011 Hyomen Kagaku  
1.は じ め に 公益法人とは,宗教や慈善,学術,技芸などの公益 (広く社会の役に立つこと)を行う法人として,約 115 年前,明治 29 年に制度がスタートした。100 年以上, 公益法人制度の抜本的な改革は行われず,世の中の変化 とのズレも大きくなっていた。そこで平成 20 年 12 月に 「新公益法人制度」が施行された。これは民間による非 営利の活動を活発にし,民(みん)による公益を増進す るとともに,官庁ごとに法人の設立・運営にばらつきが あったことなど,問題の解決を目的としている。 従来の公益法人は,公益社団法人(または公益財団法 人)もしくは一般社団法人(または一般財団法人)に移 行するため,平成 25 年 11 月 30 日までに内閣府もしく は都道府県に移行申請し,その上で,移行認定・移行認 可を受ける必要がある。なお,申請を行わなかった場合 にはその法人は解散となる。日本表面科学会は平成 20 年 6 月に文部科学省から社団法人として認可されてお り,旧法で定義された公益法人であるため,期日まで に,新たな公益社団法人または一般社団法人への移行申
more » ... することになる。 「新公益法人制度」 にどのように対応するかを理事会で議論してきた結果, 理事会として日本表面科学会は公益社団法人へ移行する ことを決し,それに必要な定款の準備,会計システムの 整備を行い,速やかに内閣府に認定の申請を行うことと した。なお,日本表面科学会が社団法人として認可され たのは最近のことなので,既に「新公益法人制度」を見 据えた会計システムを採用している。この記事では,日 本表面科学会が公益社団法人への移行認定を申請する理 由を簡単に紹介する。 2.新公益法人制度の概要 ( 1 )「公益社団法人」と「一般社団法人」の違い 一般社団法人は登記のみで設立できるが,公益社団法 人は内閣府に設置される公益認定等委員会が実施する公 益認定に合格しなくてはならない。法人の事業は公益目 的事業,収益目的事業,法人会計(管理業務に必要な費 用)の 3 種類に分けられる。公益目的事業は「学術,技 芸,慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の 事業」であって,かつ「不特定かつ多数の利益の増進に 寄与するもの」となっている。ここでいう別表で指定さ れている事業とは「検査検定」 「資格付与」 「講座,セミ ナー,育成」 「体験活動等」 「相談助言」 「調査,資料収 集等」 「技術開発,研究開発」 「キャンペーン」 「展示会」 「博物館等の展示」 「施設の貸与」 「資金貸し付け,債務 保証等」 「助成(応募型) 」 「表彰,コンクール」 「競技 会」 「自主公演」 「主催公演」の 17 種類である。 公益社団法人は公益目的事業が法人全体の事業の 50% 以上でなくてはならず,かつ公益目的事業は「収 支相償」 (利益を出してはならない)でなくてはならな い。その他,財産の管理等にも規制があるが,一般社団 法人にはそのような規制はない。また,公益社団法人は 行政庁による監査等があるが,一般社団法人にはない。 公益社団法人は行政庁の監査を受けるが,その際に事業 が公益性の基準を満たしていないとされて認定を取り消 されるような場合には,法人は解散することになるの で,注意する必要がある。こう述べてくると,公益社団 法人は制限が厳しいだけで利点が無いではないかと考え られる。しかし,公益社団法人には税法上の優遇措置が あり,例えば公益社団法人への寄付については,寄付者 は寄付額を損金として取り扱うことができるという利点 がある。 このたびの「新公益法人制度」の概要について詳しく 知りたい方は,内閣府の広報ホームページ(https:// www.koeki-info.go.jp/)を参照されたい。 ( 2 ) 日本表面科学会の位置づけ 日本表面科学会が実施している全ての事業は「新公益 法人制度」で言うところの公益目的事業に合致してお り,また,事業で利益を出してはいない。したがって, 理事会では日本表面科学会は公益社団法人としての条件 は満たしていると考えている。現在,日本表面科学会は 「旧」公益法人であるため,法律上は「特例民法法人」 として,平成 25 年 11 月 30 日まで存続が認められてい る。その間に公益社団法人になるか一般社団法人になる
doi:10.1380/jsssj.32.52 fatcat:vqtfk3fe4vdvpmovrzeuodsppa