How to Depict Artistic and Informative Operative Record

Yuhki Sakuraoka, Keiichi Kubota
2020 The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery  
1) 獨協医科大学病院第二外科 私が手術記録の図示表現で心がけているのは,臓器の質感,手術の正確な手順,局所解剖の正確性であ る.また,図の配置を含めた手術記録全体の芸術性にもこだわりをもって取り組んでいる.術前画像診断 で,その巨大さが故に,解剖学的位置関係,腫瘍栄養血管や原発部位の同定が困難であった巨大後腹膜腫 瘍の腫瘍切除の手術記録の記載において,それらを忠実に描画することで,芸術的で汎用性のある手術記 録を作成した. キーワード:後腹膜腫瘍,骨髄脂肪腫,手術記録 はじめに 手術記録は公式記録であり,高い汎用性と豊富な情報を保有することで,患者が受ける利益は計り知れ ない.質の高い手術記録の作成は,外科業務の一貫であり,外科医に課せられた義務であることはいうま でもない. 私の手術記録のこだわりは,大きく分けて 4 点である.それは,①臓器の質感(硬い,軟らかい)を忠 実に表現すること,②手術の手順を正確にわかりやすく記録すること,③正確な解剖学的位置関係を図示 すること,④Artistic Work としても優れていることである. これらの私のこだわりの 4
more » ... て,実際の当科で日常的に使用している手術記録を参照 し具体的に解説する. 症例は,巨大後腹膜腫瘍で術前画像診断では他臓器浸潤を示唆する所見とともに,多数の栄養血管の存 在し,原発部位の同定に関して合同カンファレンスでも議論となった症例であった.そのため,私のこだ わる 4 点を遵守した手術記録の詳細な記載を要する症例であり,術前診断にかかわった全ての医療スタッ フが理解でき,情報を共有し,手術を想起できる内容と情報にする必要があった.本症例を通して,階層 的,段階的な実際の手術記録作成手順を解説し,多くの外科医に,汎用性,芸術性の両面で良質の手術記 録の作成の参考となれば幸いである. 症 例 症例は 69 歳の女性で,腹部膨満感の精査で指摘された巨大後腹膜腫瘍である. 生活歴に特記事項はなく,既往歴は高血圧,糖尿病,子宮筋腫であった.血清腫瘍マーカー,ホルモン 値はいずれも正常値で,肝機能腎機能にも異常値はない.CT 所見では,左上腹部に 24 cm×15 cm の腫瘤 を認め,膵臓,脾臓,胃を上前方へ,左腎を下方に圧排していた.腫瘤の頭側 1/3 は左上副腎動脈と左下 横隔動脈から分岐する枝によって栄養され,腫瘤の尾側背側 1/3 は中副腎動脈より栄養されていた(Fig. 1a, 〈2019 年 12 月 11 日受理〉別刷請求先:櫻岡 佑樹 〒 321-0293 下都賀郡壬生町北小林 880 番地 獨協医科大学病院第二外科 日本消化器外科学会雑誌.2020;53(2):189-197
doi:10.5833/jjgs.2020.sr008 fatcat:te2nxhy2wve2vgzpozlw5njxmy