Survival strategy of lowland weed from a biological and agronomical viewpoint
水田雑草の生存戦略;種間比較から見えてくること

Shigenori Okawa
2016 Journal of Weed Science and Technology  
Keywords: lowland weed, Survival strategy, interspecies comparison, adaptability, paddy field agriculture 要 約 : 田んぼ(水田)での米作り(稲作)は"雑草との 戦い" 。宮城県で問題となっている水田雑草について,その生 き残り術(生存戦略)を比較し,問題化の要因について雑草 と人間の双方の立場から考察する。イネを栽培する田んぼで は,イネと形や性質の似たノビエが好敵手。タネ(種子)だ けでなくイモ(塊茎)でも繁殖できるクログワイやオモダカ も手強い敵である。最近では除草剤が効かない"除草剤抵抗 性"のイヌホタルイやコナギも問題となっている。また,田 んぼではイネとダイズ等を交互に作付けすること(水田輪作) もあるが,水を張らないダイズ作で増加したアメリカセンダ ングサやクサネムが翌年の稲作で問題となることもある。沿 岸部に局在するコウキヤガラ等,地理的遍在分布を示す雑草 も。最近水田地帯でも目立つアレリウリや帰化アサガオ類は
more » ... れ る。これらの水田地帯で問題化する雑草種の 6 つの生存戦略 は,農業・農村が抱える 6 つの雑草問題化の要因と深く関わっ ている。水田雑草の生存戦略は「人間の行う"米作り"に巧 みに"適応する"こと」に他ならない。 はじめに 著者は宮城県古川農業試験場の研究員として 10 年間,主 に水稲作の雑草防除担当として,各農薬メーカーが公益財団 法人日本植物調節剤研究協会を介して委託する除草剤の農薬 登録のための適用性(除草効果・薬害)試験,県内水田にお ける問題雑草を把握するための現地巡回調査,問題雑草の防 除技術確立のための圃場試験等に従事してきた。大学・大学 院は生物化学(農芸化学・植物栄養生理分野)の専攻であり, 分子生物学や有機化学の方が栽培学や生態学よりも馴染みが あった。当時はイネを材料としつつも,興味の先は農業生産 に関わる植物生理学にあり,光合成や物質転流に関わる研究 で学位を取得した。実家が専業農家であったこともあり,地 元農業に貢献したいという思いから宮城県に入庁し,3 年間, 宮城県迫農業改良普及センター(現登米農業改良普及セン ター)に作物担当の農業改良普及員(現普及指導員)として 勤務,2005 年に古川農業試験場に赴任した。雑草との出会 いは小学校の頃。通学路である農道から田んぼの畦に生えた 雑草に勝手に考えた名前を付けて楽しんでいた記憶があり, 畦際の雑草(ヤナギタデ Persicaria hydropiper (L.) Spach の桃 色の花の印象が強い)が植物に対する純粋な生物学的興味を 抱くきっかけであったように思う。その雑草という類の植物 に良くない印象を抱くようになったのはそのおよそ 20 年後, 普及員になって 1 年目の農家研修,1 ヶ月間農家に泊まり込 んで農作業を手伝うという実習においてであった。6 月末の 蒸し暑いさなか,肥料の空き袋を持って 50 a 区画の圃場に 入り,花茎の立った一面のイヌホタルイ(Schoenoplectus juncoides (Roxb.) Palla / Scirpus juncoides var. ohwianus)を手取 りするという経験をさせて頂いた。それまでは,田んぼの中 にはイネ以外の植物は無いというのが当時の私の普通の感覚 であったし,除草剤の開発が農家をきつい除草作業から解放 したという"革命"も学校では教わっていたので(有機栽培 農家もアイガモ Anas platyrhynchos var.domesticus を使ったり, 乗用除草機に乗っている時代) ,地域の先進農家に研修に来 たはずなのに,果たして自分はいつの時代にタイムスリップ してしまったのか?と思ったものだ。相当後から理解したの だが,当時はスルホニルウレア(以下 SU)とヒエ剤からな る 2 成分の水稲用一発除草剤が全盛の時代で,SU 抵抗性雑 草が問題化し始めた時期,なおかつ農水省ガイドラインに基 づく特別栽培米への取り組みが当地の JA 管内で盛んになっ た時期にあたる。すなわち,先進的な農家の圃場では SU 抵 抗性のイヌホタルイが残草しても,決められた使用農薬成分 数の制限からベンタゾン剤等の後処理剤を散布したくともで きないという事情があったのだ。この私の経験が評価されて か否かは定かではないが,古川農業試験場に赴任後は奇しく 特集 わくわくドキドキ,おもしろバイオロジー 雑草サイエンス最前線 水田雑草の生存戦略;種間比較から見えてくること 大川茂範 ★ 1, 2
doi:10.3719/weed.61.38 fatcat:wcodvtgzand7rpktko22uhpjcm