Contribution of geophysical surveys to management of social system
社会システムマネージメントへの物理探査の貢献

Toshifumi Matsuoka
2013 BUTSURI-TANSA(Geophysical Exploration)  
社会システムマネージメントへの物理探査の貢献 松岡俊文 * 論 説 2. 課題の設定 現在,我が国の物理探査業界は大きな曲がり角に来て いる。我が国の土木物理探査に対する事業費の減少は, 建設業界への公共投資額の変遷に現れている。バブル景 気が始まる 1980 年代においては,建設業界への年間投 資額は約 50 兆円で推移してきたが,バブル期の 5 年程 度で建設業界への投資額は約 1.7 倍の 84 兆円 (1992 年) まで膨らんだ。 しかしながら, バブル経済がはじけた後, 建設・土木施工分野への資金投資は減退の一途であり, 投資額はバブル崩壊前の約半分になったが,未だに好転 の気配は明確では無い(図 1) 。さらに図 2 のように建設 業界の労働生産性は 1990 年をピークに,2010 年では約 75%まで低下した。しかしながらこの間,全産業での労 働生産性は 40%増加し,また製造業だけで見ると約 2 倍になっている。このように不況の常態化の中で,出口 が見つからず業界全体が疲弊して行く状況は,かつての 世界大恐慌以後の民間事業推進力の減退,国家主義の台
more » ... 争から太平洋戦争へと続く,我が国の 暗い時代の歴史と重なって見えてくる。 この社会的状況を背景に,建設業界一般を所管する国 土交通省はその対策として,様々な改革を行おうとして いる。その一つが,建設コンサルタント業務などの入札 や契約の方法の見直しである。平成 25 年の 4 月 26 日に 国土交通省関東整備局は「平成 25 年度,建設コンサル タント業務等の入札・契約に関する説明会」 を実施した。 この説明会の目的は,平成 24 年度の落札実施結果の総 括と,平成 25 年度における入札契約手続きの実施方針 に関する,業者への説明であった。 現在国土交通省は,地質調査を始め,建設コンサルタ ントが行う各種業務に対して,2 つの指標を用いてその 技術の特性を規定し,分類している。それらは ① 知識 ② 構想力・応用力 と言う2つの指標である。 「知識」の指標とは,ある技術を利用するのに必要な知 識量,言い換えれば作業実施技術者の専門性の尺度に当 たると考えられる。あるいは,技術の学問的な深さ,と 考えてもよい。また「構想力・応用力」とは,技術を実 際の場面に適用する際,場面に応じた使い方を必要とす る程度に関する尺度と考えられる。つまり,地質調査を 実施する時に,対象となる調査地点の地理的環境や,調 査のターゲットという事項に関する変動要素を,調査の 経済性(人力・日数・調査精度)まで考慮要素に含めて, どの程度検討する必要があるかという指標である。 国土交通省はこの 2 つの指標を用いて,地質調査に関 わる数多くの技術を評価,分類し,図 3 のように図示し た。そして,この分類図面上で,契約の方法を 3 つの方 式に区別している。これらは ① プロポーザル方式(図 3 の右上の部分) 定義:当該業務の内容が技術的に高度なもの又 は専門的な技術が要求されている業務であって, 提出された技術提案に基づいて,仕様を作成す るほうが最も優れた成果を期待できる業務 ② 総合価格落札方式(図 3 の真ん中の部分) 定義:事前に仕様を確定可能であるが,入札者 の提示する技術等によって,調達価格の差異に 比して,事業の成果に相当程度の差異が生じる ことが期待できる業務 ③ 価格競争方式(図 3 の左下の部分) 図1 我が国の建設投資の推移。1992年をピークに(84兆円)減少の一途をたどり,2010年には半減(41兆円)した。特に公共工 事は2010年にはピーク時の42%まで減少した(日本建設業界連合,2012) 。
doi:10.3124/segj.66.221 fatcat:ozjjavoa6nh5fatin7y75pkfiu