肺炎球菌ワクチン接種の有用性
Efficacy of Pneumococcal Polysaccharide Vaccine in Our Hospital

Yuji ITO, Kumiko TANAKA, Hironaga OKAWA, Masamitsu MATSUDA, Yutaka SHIMAZAKI
2011 Japanese Journal of Infection Prevention and Control  
2010 年 6 月 21 日 受付・2010 年 11 月 12 日 受理) 要 旨 肺炎球菌ワクチンの有効性は死亡率減少や侵襲性肺炎球菌感染症予防について報告されている が,肺炎の発症予防については有効性が示されていない場合が多い. 本研究では, 「ワクチン接種者数と感染症の推移」および「ワクチン接種の有無による予後の検 討」を行った.前者は,2006 年 9 月から 2009 年 8 月までに当院で接種された肺炎球菌ワクチン 数,侵襲性肺炎球菌感染症数,肺炎球菌性肺炎数の推移を検討した.後者は,2008 年 9 月から 2009 年 8 月までにワクチンを接種した群と当院総合内科に入院した群(非接種群)とで予後(死亡・ 肺炎発症)を評価した. 肺炎球菌ワクチン接種者数は毎年有意に増加したが,侵襲性肺炎球菌感染症・肺炎球菌性肺炎に ついては有意な減少を認めなかった.一方,肺炎球菌ワクチンを接種した群は非接種群に比べて有 意に死亡率が低下した(Hazard Ratio [HR] 0.29; 95 conˆdence interval [CI] 0.18 0.40)ものの,
more » ... 0.18 0.40)ものの, 肺炎の発生を有意に抑制しなかった(HR 0.83; 95CI 0.65 1.11). 当院でのワクチン接種普及の取り組みによって肺炎球菌ワクチン接種者は有意差を持って増加し たが,侵襲性肺炎球菌感染症は減少しているものの有意差を示すことができなかった.肺炎球菌ワ クチンの接種によって死亡率の有意な低下を認めたが,肺炎の発生については有意差を認めなかっ た. Key words肺炎球菌ワクチン,侵襲性肺炎球菌感染症,肺炎球菌性肺炎 は じ め に 肺炎球菌ワクチンは米国のワクチン接種に関する諮問 委員会(Advisory Committee for Immunization Practices)においても 65 歳以上の成人あるいは 2 64 歳まで の基礎疾患をもつ患者において接種が勧められてい る 1) .近年日本環境感染学会からも,同様の推奨が出さ れたばかりである.当院でも 2008 年 9 月から,肺炎球 菌ワクチン接種普及の取り組みを開始し,多くの方に啓 発・接種を行っている. ガイドラインでの推奨もあり,多くの地域・医療機関 での接種励行が進んでいる一方で,実際の効果について は懐疑的な部分も報告されている 2) .一概に「効果があ る」というだけではなく,実際にどのアウトカムに対し て効果があり,どのアウトカムに対して効果がないのか を知り,対象者に対して情報を提供する必要があると考 えられる. 今回,ワクチン接種普及の取り組み前後での感染症 (侵襲性肺炎球菌感染症・肺炎球菌性肺炎)の推移,また キャンペーン中の接種者および非接種者での予後の違い (全死亡率・全肺炎発生率)を調査することにした.
doi:10.4058/jsei.26.30 fatcat:lsbwyhahlzcebmbe5wm7i6kxce