A Feasibility Study on Use of Apple Waste as Swine Feed to Reduce a Factor Attracting Wildlife to Human Settlements
野生動物の人里への誘引防止を意図したリンゴ廃果の養豚飼料としての利用可能性の評価

Yuki NAKAMURA, Koji HARASHINA
2016 JOURNAL OF RURAL PLANNING ASSOCIATION  
Ⅰ はじめに 日本各地の農山村において野生鳥獣による農林業被害 や人身被害が問題となっている。特に人身被害を引き起 こすおそれがあるツキノワグマの場合,人里へ侵入する こと自体が生活環境を脅かす大きな問題である。 山内ら 1) は,近年,岩手県で人里に出没するツキノワ グマが増加していることを指摘している。岩手県はリン ゴの主要な産地であり,生産量は全国第 4 位である 2) 。 生産量が多い分,廃果も大量に発生するが,山際などに 廃果が放置されていると,臭いによって野生動物が誘引 される。青井・藤村 3) は,リンゴ園内に何箇所も存在す る廃果捨て場が,ツキノワグマを誘引していることを指 摘している。このため,集落周辺の刈り払いや廃果を埋 めるといった適切な処理など,ツキノワグマの人里への 侵入防止対策を地域が一体になって取り組む必要がある。 特にリンゴ園が多く分布する山際の地域では,農家が扱 いに困っている廃果の処分方法を検討・実施していくこ とが必要である。 廃果の処分方法のひとつとして,飼料としての有効活 用が考えられる。2000 年に制定された食品循環資源の再
more » ... に関する法律 (食品リサイクル法) では, 飼料化は食品循環資源のもつ成分や熱量を最も有効に活 用できる手段であり,飼料自給率の向上にも寄与できる とされ,2007 年の改正では食品廃棄物の再生利用におい て飼料化が最優先に位置づけられた。食品リサイクル法 が施行されてからエコフィード 注 1) に注目が集まってい るが,かつて食品廃棄物で養豚を行うことは珍しいこと ではなく,全国各地で行われていた。しかし,現在は配 合飼料の普及により衰退した 4) 。 そこで本研究では,養豚に着目し,総合的な獣害対策 の一環として,岩手県におけるリンゴ廃果の飼料として の利用可能性を評価することを目的とした。 具体的には, リンゴ廃果の飼料化に対するリンゴ農家および養豚農家 の意識を明らかにし,利用実現にかかる問題点の整理と 方策の検討を行った。 Ⅱ 方法 1 調査対象地 岩手県内全域を対象とした。また,リンゴ園が多い地 域として盛岡市および紫波町を重点的に調査した。 2014 年の岩手県におけるリンゴの生産量は 46,500 t, 栽培面積は 2,420 ha である 2) 。また,豚の飼養農家数は 123 戸で飼養頭数は 450,200 頭,そのうち母豚の飼養頭 数は 43,400 頭である 5) 。果樹の鳥獣被害については,岩 手県農林水産部農業振興課のデータによると,2013 年度 の県全体の被害面積は 28,973 a,被害量は 615 t,被害金 額は 125,615 千円である。 2 廃果の定義 本研究では,廃果を「収穫後の粗選果の段階において はじかれたもの」と定義した。これらは,廃果捨て場等 にまとめて廃棄される他,ジュース等の加工用に回され る場合もある。聞き取り調査から,摘果した未熟果実を ツキノワグマが食べることはまれであることが分かった ため,検討から除外した。また,鳥獣被害により落下し たリンゴについても,収集に手間がかかり,飼料化に用 いるのは現実的ではないため,検討から除外した。廃果 の発生率については,後述するリンゴ生産者への聞き取 りからは 1%未満~5.5%という回答・推計値が得られたが, ここでは適切な処理を要する廃棄物の発生量という観点 から,大きめの値として 5%を設定した。また,りんご 1 個あたりの重さは一般的な値として 300 g とした。 3 聞き取り調査およびアンケート調査 234 農村計画学会誌 35巻論文特集号 2016年11月
doi:10.2750/arp.35.234 fatcat:av4nhliepvekdf6gsxye4jbniq