地震解説業務の見直しについて Reexamining Earthquake Commentary Services

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1 はじめに 平成 5 年(1993 年)北海道南西沖地震による津波 災害を契機として津波地震早期検知網を整備したこ とにより,気象庁は津波警報や地震情報のより迅速 な発表体制を整えるとともに,地方気象台等におけ る地震津波業務をそれまでの地震観測,波形検測, 電文送信等から地震解説資料の作成・提供等の業務 に移行した. 業務移行からの 20 年間で情報通信技術は飛躍的 に進展し,地震・津波に関する様々な情報が専用回 線やインターネット経由でリアルタイムに提供でき るようになったことから,地方公共団体における情 報入手手段は格段に迅速・多様化した. また,平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地 震の発生以降,全国の地方公共団体において,的確 な避難勧告等の発令に向けた地域防災計画や防災体 制の見直しが行われるなど,災害時における防災対 応のあり方についての再検討が進んでおり,気象庁 では,地方公共団体の防災対策の支援の強化に取り 組んでいるところである. こうした状況を踏まえ, "地震津波災害から一人で も多くの命を守るためには,住民への防災対応を中
more » ... 団体を効果的に支援して いくことが重要である"との観点から,地震津波に 関する資料提供や情報解説のあり方について検証し, 地方公共団体の防災対応の支援の強化を目指した地 震解説業務の見直しを行った. 本稿は,平成 25 年度から 26 年度にかけて行った 一連の地震解説業務の見直し内容について整理して まとめたものである. 2 見直しに向けた課題の抽出 今回の見直しに着手するにあたり,これまでの地 震解説業務に内在する課題を抽出したところ,大き く以下の 2 点が挙げられる. ・情報流通の迅速化や情報入手手段の多様化等によ り,地方公共団体の防災情報に対するニーズが変 化してきていると考えられる中,地震解説資料が 地方公共団体のニーズを満たしているか十分に把 握できておらず,資料の利用価値の分析が不足し ている点 ・地震発生時等の限られた時間中に管区気象台と地 方気象台が同じような資料を作成しているため, 地方気象台の作業労力が資料作成に裂かれ,地方 公共団体への情報解説に注力するための体制や, 効果的な情報解説を行うための環境が十分に整っ ていない点 これらの課題を改善することを念頭におき,業務 見直しの検討に着手した. 3 防災情報等に関するニーズ調査 3.1 地方公共団体への調査 業務の見直しにあたって,まずは大きな課題の一 つである地方公共団体のニーズを十分に把握するた め, 平成 25 年 9 月に全国の地方公共団体に協力いた だき,気象台が提供する地震・津波に関する資料や 解説についてのニーズ調査を実施した.その概要は 次のとおりである. (1) 調査対象 調査を行う地方公共団体は,各都道府県(北海 道においては各振興局, 沖縄県においては各事務 所を含む,以下同じ)及び,各都道府県あたり * 寺川正之 験 震 時 報 第 7 9 巻 (2016)63~81 頁
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