Structural Analysis of Vulcanized NBR Using Swollen State, Solution State and Solid State 1H, 13C NMR Spectroscopy
加硫アクリロニトリルブタジエンゴムの膨潤状態,溶液および固体 1H,13C NMR による構造解析

Hirotada FUJIWARA, Junichiro YAMABE, Shin NISHIMURA
2009 Kobunshi ronbunshu (Tokyo)  
要 旨 硫黄加硫アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の化学構造解析を固体 1 H および 13 C NMR を用いて実施した.固体 NMR スペクトルの詳細な帰属を,加硫ゴムの膨潤状態における溶液 NMR スペ クトルおよび原料ゴムの溶液 NMR スペクトルと比較検討することにより決定した.とくに,これまで詳 細な帰属が報告されていなかった 13 C NMR スペクトルにおいて 33 ppm に見られる単一ピークはアクリ ロニ トリル のメ チン とメ チレ ンピ ーク の重 なりで ある こと が DEPT 測 定に より 判明 した .ま た, 1 H NMR における 1,4-ブタジエンのメチレンに帰属される 2.09 ppm のブロードピークは,隣接する官能 基がメチレンあるいはメチンの場合で異なる 2 種のピークの重ね合わせから形成されていることが二次元 NMR により確認された.この結果,NMR スペクトルの詳細な帰属を決定することにより共重合体であ る NBR のモノマーユニット比の決定が可能になった. 1 緒 言 一般に,加硫ゴムは,溶媒に可溶な低分子・高分子有
more » ... 化合物とは異なり,溶媒に溶解しないため,高分解能 の NMR スペクトルを得ることが困難である.さらに, 実用的な加硫ゴムは補強材としてフィラーを含むことが 多く,ゴムの分子運動が抑制され,高分解能の NMR ス ペクトルが得られない.特に,フィラーとしてカーボン ブラックが添加されている場合,カーボンブラックによ る遮蔽効果も加わり,NMR スペクトルの分解能は低下 する.このような状況下,加硫ゴムの高分解能 NMR ス ペクトルの計測による詳細な構造解析が試みられてい る.近年,固体 NMR 法はめざましい発展を遂げ,溶媒 に溶解しない固体試料からも分解能の良い NMR スペク トルを得ることができるようになり,固体 NMR による 加硫 ゴムの 架橋 構造の 解析例 があ る 1)~3) . たと えば Koening らは硫黄加硫した天然ゴムやブタジエンなどの 固体 13 C NMR スペクトルを測定し,詳細な架橋点の構 造を決定し,報告している 4) .また,河原らは溶媒に不 溶な加硫天然ゴムを微粒子化し,水に分散させて測定す る溶液 NMR 法を用いて高分解能 NMR スペクトルを測 定するラテックス 13 C NMR 法を確立した.微粒子状の 加硫天然ゴムを水に分散させることにより,双極子 双 極子相互作用が相殺され,化学シフトの異方性が平均化 される.これにより溶液 NMR 法を用いて固体の高分解 能 13 C NMR スペクトルを得る事を可能にし,加硫天然 ゴムの詳細な構造解析を行っている 5) . 筆者らは高圧水素ガスシール用ゴム材料の開発を目的 として,高圧水素ガスに曝露された際のゴム材料への水 素の影響評価を進めている.その一環として,高圧水素 曝露によるゴム材料の破壊現象に着目し,高圧水素ガス 曝露によりゴム材料に溶解した水素の脱離過程におい て発生した気泡を起点とする破壊現象について報告し た 6)~8) .また,高圧水素ガス曝露によるゴム材料の化学 構造変化について,NMR,IR,ラマンスペクトルを用 いて検討を進めている 9) .ゴム材料の水素曝露による化 学構造変化を検討する上で,初期の材料の化学構造を明 確にすることは重要であり,これまで高分解能のスペク トルが得られなかったことから,明確な帰属が確定して いなかった加硫ゴム材料について NMR スペクトルの帰 属を明らかにする必要がある.劣化の原因となるゴム 中に溶解した水素分子の定量や,高圧水素曝露による 化学構造劣化を評価する上で,高圧水素曝露後のゴム材 料の固体状態での測定が求められており,とくに固体 1 H NMR スペクトルの詳細な帰属が必要となる.この ため,加硫ゴム材料の高分解能固体 NMR スペクトルの
doi:10.1295/koron.66.363 fatcat:rk3oznk5zvbfdbyvo3ekj7xkt4