VII. Key Points for the Management of Hypertension in the Elderly
VII.高齢者の高血圧治療のポイント

Hiromi Rakugi
2015 Nihon Naika Gakkai Zasshi  
はじめに 高齢者の定義は一般的に65歳以上であり, 74 歳までを前期高齢者,75歳以上を後期高齢者と する区分が日本や世界的なレベルでの統計や老 年医学の世界で用いられている.超高齢という 用語もあり,75 歳以上あるいは 80 歳以上を指 すことが多い.実際の臨床において,多疾患の 合併や臓器予備能力の低下,高血圧治療におい ても治療方針に影響を与え得る老年症候群の合 併などは,主に後期高齢者,超高齢者で認めら れることが多い.今回の高血圧治療ガイドライ ン改訂(JSH2014) 1) において,非高齢者での降 圧目標が 140/90 mmHg未満となったこと,第 一選択薬が非高齢者であってもβ遮断薬が除か れ,Ca拮抗薬,アンジオテンシンII受容体拮抗 薬(angiotensin II receptor blocker:ARB) ,ACE (angiotensin converting enzyme)阻害薬,利尿 薬になったことによって,従来のガイドライン の前期高齢者に対する推奨との差異がほとんど なくなった.このような背景もあり,JSH2014
more » ... に後期高齢者 を念頭に置いている. 1.血圧動揺性を考慮した血圧診断の要点 高齢者高血圧の特徴は,動脈硬化進展と臓器 予備能力低下によるもので,収縮期高血圧の増 加と様々な状況での血圧の変動が大きいこと (血圧動揺性の増大)がある.血圧動揺性の増大 は診断と治療のいずれにおいても重要である (表 1) . 高血圧の診断においては,血圧動揺性の増大 と関連して,①白衣高血圧の増加,②食後血圧 低下の増加,③起立性低血圧の増加,④早朝の 昇圧例の増加に留意する.くり返し血圧を測定 高齢者の高血圧治療のポイント 要 旨 楽木 宏実 高血圧治療ガイドライン 2014(JSH2014)での高齢者高血圧に関する大 きな改訂点は, 降圧薬治療対象について個別判断の必要な例を具体的に挙 げたこと, 後期高齢者に対する降圧目標について前回のガイドラインで中 間目標としていた150/90 mmHg未満を最終目標にしたことである.これ に加えて, 超高齢者の合併症や老年症候群も考慮した診断と治療における 注意点を記載した.高血圧を窓にした高齢者診療の充実につなげたい. 〔日内会誌 104:253~259,2015〕
doi:10.2169/naika.104.253 pmid:26571704 fatcat:2azcrevfc5gmdgtrksjzsdr4dq