流行性角結膜炎に対する地域社会と連携した感染対策の試み
Infection Controls against Epidemic Keratoconjunctivitis in Cooperation with Local Community

Masayoshi HOSODA, Satomi KOMATSU, Miyuki MATSUSHITA
2008 Japanese Journal of Infection Prevention and Control  
要 旨 流行性角結膜炎(EKC)は接触伝播し,しばしば院内感染を引き起こす.2006 年 7 月から 9 月に 眼科病棟のない当院で EKC が流行した.入院患者 4 名,職員 2 名,外来患者 7 名の計 13 名の発 症があり,当院感染対策委員会は,アウトブレイクと判断した.院内の対策として,感染者の隔 離,患部処置法の指導,環境の消毒などの接触感染対策の強化を行い,感染職員には出勤停止を指 示した.更に,職員全員への啓発を目的に,院内へのポスター掲示や警告文書回覧を行った. EKC 患者が発生した特別養護老人ホームへは当院の認定 ICD が,接触感染対策と新規 EKC 発症 の監視を指導した.また,院外の発症に対しては,地域内の保育園が EKC 感染の媒介になってい る可能性があり,当院から当該保育園へ患児の登園停止や集団生活での接触感染対策を指導した. 更に,家庭内や教育現場での感染拡大を防ぐために地域社会全体への啓発活動を実施した.行政保 健師を中心に EKC への啓発番組を制作し,地域内ケーブルテレビで 2 週間放映した.これらの対 策の結果,院内・院外とも EKC
more » ... 策の結果,院内・院外とも EKC 流行は終息した.行政と地域メディアの協力を得た,地域社会へ 向けた感染対策は有用であった.感染制御に携わる医療従事者は,地域社会での感染対策活動にも 指導的立場で臨むことが必要である. Key words流行性角結膜炎,地域社会,中小病院 は じ め に 医療現場の拡大に伴い,医療関連感染対策は医療機関 のみならず介護福祉施設や教育機関,更には一般家庭に も必要とされている.しかし,感染制御に従事する医療 関係者の多くは医療機関に属しており,地域社会の感染 対策に関与する機会は少ない.また,医療機関でも中小 病院や診療所では,感染制御関係の人材不足などによ り,未だ充分な感染対策がなされているとは言いがた い.反面,こうした医療機関は,在宅医療や訪問看護な どの地域社会と密接な医療を提供している事が多い.そ のため,ひとたび地域社会で感染症が流行すると,こう した医療が感染伝播を媒介する可能性が高い.特に潜伏 期間が長く感染力の強い疾患では,十分な感染対策がな されず流行が覚知されないまま,広範囲に感染を広げる 危険性がある. 流行性角結膜炎(EKC)はアデノウィルスによる眼感 染症である.夏期を中心に流行し,接触により伝播す る.潜伏期間は 1 から 2 週間で,感染力も強いためし ばしば医療関連感染を起こす.院内で集団発生した場合 は一時的な病棟閉鎖に至ることもある 1,2) .このため, EKC 感染の拡大を防止するためには,標準予防策に加 え,接触感染対策を十分に行う事が必要である. 本稿では,小規模病院での EKC 流行を契機として, 病院内のみならず,地域社会へも感染対策活動を実施し た事例を報告する. 背 景 当院は病床数 113 (うち療養病床 30)の小規模病院 で,一般病棟は 2 病棟のみである.周辺 2 町 3 村で唯 一の病院であるが,眼科病棟はなく,眼科医は週 1 回 半日の非常勤である.感染対策業務は,感染対策委員会 (ICC)が担い,独立したインフェクションコントロール
doi:10.4058/jsei.23.140 fatcat:l42ldyr3q5ghpbhjoilhtemddq