Argatroban anticoagulation in patients with heparin-induced thrombocytopenia

Takefumi MATSUO
2010 Japanese Journal of Thrombosis and Hemostasis  
血栓止血誌 21 (4) :412~413, 2010 アルガトロバンはアルギニン骨格を有する分子 量約 530 の合成化合物で,トロンビン活性中心 に可逆的に結合し,トロンビン活性を選択的に, そしてアンチトロンビンを介することなく直接的 に阻害する抗トロンビン剤の一種である. 本剤は, 北米,EU,日本において,HIT の血栓合併の予 防や治療に用いられている.その半減期は約 40 ~50 分と比較的短いが,他の類似作用を持つ抗 トロンビン剤(lepirudin, bivalirudin )と同様に 拮抗薬がないので,過量投与には出血のリスクが 増加する. アルガトロバンは他の抗トロンビン剤と異な り,その排泄経路は肝胆汁系であるため,腎障害 では減量の必要はないが,肝障害があれば減量す る.肝血流の減少する心不全や多臓器不全があれ ば,初回投与量からアルガトロバンを減量する. HIT 治療中のアルガトロバンによる大出血の頻 度は,海外では 0~10%であるので,これを受け て本邦での初期投与量(0.7μg/kg/分)は海外よ り低く設定されている.現在のところ,本邦での HIT
more » ... 治療中の出血頻度に関する調査はないので, その実態は不明である.海外では,APTT が 100 秒以上,冠インタベンションでは ACT が 450 秒 以上では出血のリスクは増大するとされており, 日常の臨床で出血リスクを最小限にするために APTT で 90 秒以下に維持することが勧められて いる 1) . 2009 年 7 月にボストンで開催された 22 回国際 血栓止血学会で,アルガトロバンの先発品と 3 種 類の後発品 (スロバスタン, 沢井製薬. ガルトバン, シオノケミカル.アルガロン,日医工)との抗凝 固作用に関する同等性について in vitro の実験報 告があった.PT/INR に対する添加実験で,後発 品毎に PT/INR は異なり,強い PT/INR 作用を 持つ後発品の使用では,出血のリスクの増加が予 想されるとの発表があった 2) .特定の後発品を使 用する際には,出血リスクを避けるため製剤毎の 特性による投与量の調節が求められる.また,特 定の後発品の APPT に対する 0.62μg/ml の添加 実験では,先発品に比較して 4.5 秒の延長であっ た.しかも, 後発品相互間に最大 9.2 秒の差があっ た.そして,強い抗凝固活性を持つ後発品の使用 は,かえって出血リスクを増すことの不利益につ ながると予想されている 3) .このように,後発品 間の抗凝固活性には多様性があるので,単一の抗 凝固検査で抗凝固活性の比較は困難なことから, 製剤毎の特性に応じた治験の必要が強調されてい る. アルガトロバンの抗トロンビン作用は,R 体と S 体の光学異性体の比によって左右され,先発品 * 兵庫県立淡路病院〔〒 656-0013 兵庫県洲本市下加茂 1-6-6〕 Hyogo Prefectural Awaji Hospital 〔1-6-6 Shimogamo,
doi:10.2491/jjsth.21.412 fatcat:glmzjhtcwzdrzlgsvq4s2j4h2e