解体コンクリートによる二酸化炭素の固定
Uptake of Carbon Dioxide in the Demolished and Crushed Concrete

Yasuhiro Kuroda, Toshifumi Kikuchi
2009 Concrete Research and Technology  
乾湿を繰り返した場合に,CO 2 の固定が著しく速くなることを示した。また,複数の中間処理工場から入手した再生 砕石 RC40 の試験結果より, コンクリート塊を破砕して得られた 1ton の RC40 が結果的に固定している CO 2 量を 11kg -CO 2 程度と推定した。この結果をもとに鉄筋コンクリートの LCCO 2 を試算すると,CO 2 の固定量を考慮した場合は しない場合に比べて 5.5%程度 LCCO 2 が小さくなり,LCCO 2 を試算する場合には,解体コンクリートによる CO 2 の固 定量を考慮した方が合理的なことがわかった。 キーワード:解体コンクリート,二酸化炭素,炭酸化,乾湿繰り返し,LCCO 2 1. はじめに 地球温暖化の問題を背景として,温室効果ガス排出量 の削減が世界的に求められている。1997 年には,気候変 動枠組条約第 3 回締約国会議(COP3)において,京都議 定書が採択され,2004 年にロシアが批准したことを受け, 2005 年に発効された。我が国では 2008~2012 年の間に 1990 年を基準として,温室効果ガス 6
more » ... 排出量を 6% 削減することが義務付けられている。 しかしながら, 2005 年度の温室効果ガスの排出量は,1990 年比で 7.8%の増 加 1) となっており,約束年までの目標の達成が危ぶまれ ている状況にある。 また,こうした温室効果ガス増加の原因の一つとして, 経済成長やそれに伴う消費の拡大が挙げられており,現 在の大量生産・大量消費から離脱するための議論も始ま っている。コンクリートは建設分野において大量に生 産・消費されている資材の一つであり,セメント産業に よる CO 2 排出量が人為的に排出する世界中の CO 2 排出量 の約 5%を占めている 2) ことを考えると,コンクリート 構造物の延命や長寿命化など,CO 2 排出量削減に向けて の取組みが今後ますます重要になると考えられる。 一方,高度経済成長期に建設された建築物が更新時期 を迎えるにあたって,建築物の解体に伴う廃コンクリー ト発生量の増加が予測されている 3) 。1990 年比での建築 物の解体量が増加すると,解体に伴う CO 2 排出量も増大 すると考えられる。 ところで,コンクリートの LCCO 2 を求める場合,CO 2 排出だけではなく,供用時および解体後のコンクリート 塊による CO 2 の固定を考慮する動き 4) が,欧州を中心と してある。一般に,コンクリートの中性化はコンクリー ト表面から√t 則によって進行し,Ca(OH) 2 等のセメント 水和物は炭酸化反応によって CaCO 3 を生成し,CO 2 を固 定する。これは構造物を解体した後のコンクリート塊に ついても同様であるが,表面積が格段に大きくなるだけ でなく,炭酸化していない新しい破断面が増えるため, 結果的に CO 2 を固定する量も増加すると指摘されている。 こうした状況を踏まえ,本研究ではコンクリート塊に よる CO 2 の固定について,以下のような検討を実施する ことにした 5) ,6) 。 (1)モデル試験 1)モルタル片を用いた試験 セメント種類と水セメント比を変えて作製したモル タル供試体を破砕して得た疑似コンクリート塊(モルタ ル片)を用い,解体コンクリートによる CO 2 の固定が, 破砕・曝露された結果として,指摘されているように増 加するか否かを確認するとともに,粒度範囲や曝露条件 の違いが,CO 2 の固定に及ぼす影響を明らかとする。 2)コンクリート片を用いた試験 実構造物の解体により発生したコンクリートを破砕 して得たコンクリート塊(コンクリート片)を用い,最 大寸法や曝露条件の違いが,CO 2 の固定に及ぼす影響に ついて明らかにするとともに,コンクリートの LCCO 2 の算定を行う際に,解体コンクリートによる CO 2 の固定 は考慮しなければならない事項であるかを明らかとする。 (2)中間処理工場における実態調査 複数の中間処理工場を対象にヒアリング調査を実施 *1 清水建設㈱主任研究員 技術研究所生産技術開発センター 工修 (正会員)
doi:10.3151/crt.20.1_15 fatcat:u6ckxtxhpbca5p3cwvpemqxmlm