II-2. Function analysis of tributyltin-binding protein
II-2. トリブチルスズ等異物結合タンパク質の機能解明

YUJI OSHIMA
2015 Nippon Suisan Gakkaishi  
我々は,水圏を汚染しその強力な毒性と内分泌かく乱 作用を持つトリブチルスズ(TBT)が,魚類の血液に 高濃度で蓄積することを明らかにし,その原因物質とし て,ヒラメより TBT 結合タンパク質(TBT-bps; TBT-bp1 および 2)を発見した。 1,2) TBT-bp1 の性質を調べ た結果,約 42 の N 型糖鎖を持つ酸性の糖タンパク質 (分子量約 46.5 kDa, pI=3.0)であり,全遺伝子配列 (TBT-bp1: 2.1 kbps, TBT-bp2: 2.8 kbps)から,リポカ リンの特徴であるエキソン/イントロン構造,二次構造 および立体構造(1×a へリックス+8×b シート)を持 っていた。 TBT-bps のオルソログ検索の結果,硬骨魚類で多数 の類似タンパク質が見つかった。これらは TBT-bps と 同様の二次構造が予測され,各魚類の体内で TBT-bps と同様の機能を持つことが予想された。特に興味深いこ とに,TBT-bp 2 はヒガンフグの PuŠerˆsh saxitoxin and tetrodotoxin binding
more » ... n (PSTBP)と高いホモ ロジーを有しており,PSTBP は TBT-bp2 が 2 回繰り 返した構造を有していた。 さらにヒラメ TBT-bps は体内に取り込まれた TBT と血中で結合し体表粘液に排泄されることを実験的に証 明した。ヒラメに TBT-d27 を腹腔内投与した結果, TBT-d27 は血液中に蓄積され,体表粘液中からも検出 された。TBT-bps も同時に粘液中に存在したことから, TBT-bps は血中で TBT と結合し,体表粘液を介して TBT を排泄する機能を持つと考えられた。 3) また,TBT 毒性低減機能について検討した。初めに カイコ-バキュロウイルス発現系を用いて,ヒラメ TBT-bps 遺伝子組換え体(rTBT-bps)を血液中に産生 さ せ た 。 rTBT-bp1 を 用 い て ヒ ブ ナ Carassius auratus 鱗の骨芽細胞における骨代謝阻害のレスキュー試験を行 った結果,TBT と rTBT-bp1 を共存させることにより TBT の毒性が抑制された。 4) さらにトラフグ PSTBP1, 2 組換え体(rTBT-bps, rPSTBPs)は TBT に対する結 合性を有していたが,rPSTBP2 のみが TTX に対する 結合性を示した。TBT-bps, PSTBPs は異物結合機能を 持つことが予想され,さらに PSTBP2 はトラフグ体内 における TTX の体内輸送に深く関与していると考えら れた。 文 献
doi:10.2331/suisan.81.733 fatcat:y5skanry7ba67o4tg6e2hsksyu