Marine Litter in Border Island Tsushima and Activities to Enlighten People about Environmental Learning

Tokushige Koojima, Nobuyasu Ikoma, Yoshinori Mihara
2017 Marine Engineering  
1-日本マリンエンジニアリング学会誌 第 00 巻 第 00 号 (20XX) 1. はじめに 対馬は,日本海の西端に位置する九州最北端の国境 の島である.島の西側は朝鮮半島に面し,東側は対馬 海峡を隔てて九州本土に面している.南北 82km,東 西 18km の縦長の島であり,海岸の出入りや大小の島 が多く,海岸線の総延長は 915km にも及ぶ. 対馬暖流は,対馬の南端で東西に分岐,北上する. 冬季には大陸からの季節風の影響を受ける.対馬の海 岸は発泡スチロール,プラスティック,流木,漁網な ど大量かつ多様な漂着ゴミの溜り場となっている.美 しい浜辺は喪失し,生態系を含む海岸環境は悪化し, 対馬の基幹産業である水産業への影響等の被害が生じ ている.漂着ゴミの円滑な回収・処理は対馬にとって 喫緊かつ継続的な課題である. 2.漂着ゴミをめぐる現状と課題 2.1 漂着ゴミをめぐる現状 海岸漂着ゴミの量が多い特異な環境下に置かれてい る対馬市では,これまで環境省予算における複数の漂 着ゴミ関連の調査や回収事業,水産庁予算による回収 のほか,地域の民間団体等による海岸清掃活動が実施
more » ... た.しかし,これらについては限定的な規模 あるいは一時的な措置のため,環境保全の観点から十 分な海岸清掃活動になっているとは言えない.漂着と 回収の繰り返しで,次々と新たなゴミが漂着し,全て のゴミの回収・処理は困難である. 対馬市における回収量を年度ごとにみると,その量 は回収費用の多少に比例している.平成 21 年度以前 は,市単独での漂着物の回収・処理に関わる特定の予 算設定はなされておらず,必要性が生じた場合に予算 建てを行って対処していた.平成 21 年度に「海岸漂 着物処理推進法」が施行され,22 年度以降,対馬市で は海岸漂着物対策に関わる補助金等を利用できるよう になり,回収量も飛躍的に増大した.平成 13 年度か ら21年度までの回収費は県費補助金を含め総額5,552 万円 (年平均約 617 万円) であり, 回収量は総量 4,128 ㎥(年平均 458 ㎥)であった.法施行後の平成 22 年 度, 23 年度の 2 年間は全額国庫補助で約 8 億円を投入 し,約 22,400 ㎥を回収している.国の財政支援なく して本格的な回収作業は困難であることが明らかであ る. 回収後の処理に関する現状は更に深刻である.海岸 清掃活動による回収ゴミについては,ゴミに含まれる 塩分の焼却炉への影響及びダイオシキン類の発生可能 性等を考慮して,対馬市クリーンセンターでは漂着ゴ ミのほとんどを島外あるいは島内の廃棄物業者に委託 して島外で処理していた.本土への長距離の輸送のた め費用がかさみ, 事業費の約 40%が輸送費に充てられ ていた. 漂着ごみの処理について,環境省の方針は平成 28 年度まで年度内処理が原則であったが,平成 29 年度 からは方針が変更になり,前年度に回収し野積みで乾 燥させた海洋ごみを今年度の事業予算で処理すること が可能となった.対馬市には廃プラスティック類の産 業廃棄物を処分できる安定型最終処分事業所が 1 カ所 あり,対馬市は 29 年度から島内で埋立処分すること を決定した.島外への輸送コストが削減され,削減さ れた費用を回収事業等に使うことができる経済的メリ ットはあるが,有価物としてのリサイクルの方法など 今後検討すべき課題もある. 2.2 漂着ゴミをめぐる課題 2.2.1 漂着ゴミの回収・処理に係る自治体の費用負担 増 平成 22 年度以降,海岸漂着物対策に関わる補助金を 利用し,大規模な回収・処理事業が実施された.対馬 市への補助金配分は平成 22 年度,23 年度の 2 か年で
doi:10.5988/jime.52.594 fatcat:qmvofdp42faanizk2irihuqwji