Identification of thrips on Suizenjina and their chemical control

Akio Tatara, Yoshinori Amano, Keitaro Sugiyama
2008 Annual Report of The Kansai Plant Protection Society  
スイゼンジナ Gynura bicolor(Will.)は熱帯アジアを 原産とするキク科の野菜で,キンジソウ,ハンダマとも 呼ばれており,石川県や沖縄県で栽培されている 3) 。静 岡県浜松市天竜区春野町でも2000年頃から無加温のビニ ルハウスで栽培されており,4月~11月の間収穫し,ス ミレナの名前で販売している。スイゼンジナではアザミ ウマ類,アブラムシ類,ハダニ類などが害虫として問題 となっている。アザミウマ類にはエマメクチン安息香酸 塩乳剤2,000倍が登録されているが,登録の際試験した アザミウマ類の種類は不明である。今回,スイゼンジナ からアザミウマ類を採集し,同定を行った。また,それ らのアザミウマ類に対してスピノサド顆粒水和剤の効果 を検討したので報告する。 材料および方法 1 試験ほ場 静岡県浜松市天竜区春野町のビニルハウスに栽培され ているスイゼンジナを供試した。定植は2005年6月25日 に直挿しで行ない,畝幅は 120 cm,株間が 20 cm の2 条植えである。 2 アザミウマの種の同定 2007年6月11日に農薬試験を行わない所からスイゼン
more » ... るアザミウマ成虫を吸虫管で約30頭採集 し,50%のアルコールに浸漬して実験室に持ち帰った。 それらをガムクロラール液に封入し,生物顕微鏡下で種 の同定を行なった。 3 薬剤効果試験 供試ほ場で1区 4.8 m 2 (1.2×4 m)40株の3反復で試 験区を設定した。2007年6月11日にスピノサド顆粒水和 剤5,000倍を 10 a あたり200リットル相当量を肩掛け噴霧 機で散布した。対照薬剤はすでにアザミウマ類に登録の あるエマメクチン安息香酸塩乳剤2,000倍とし,さらに 無処理区を設けた。散布前にアザミウマの寄生数を調べ たが,密度が低かった。しかし,他の植物で現れるアザ ミウマによる被害症状と同様な濃色葉脱色や新葉の奇形 が認められ,他の害虫がほとんど見られなかったことか ら,アザミウマの被害で薬剤の効果を確かめることにし た。すなわち,薬剤散布前に各区5茎について展開葉の 上をひもで縛ってマーキングし,散布14日後の6月25日 にマーキングした5茎の芽の生育状況を調べた。調査時 点で概ね5葉以上の葉が展開していたことから,1区 100芽について上位展開葉5葉のアザミウマによる奇形 数を調査した。 結果および考察 採集個体はすべて黄色で胸部に褐色斑があり,腹部 の前方節の背板前縁に沿って濁りがあった。また,触 角第1節は黄色で他は褐色であった。以上の形態的特 徴から 4) すべての個体がクロゲハナアザミウマ Thrips nigropilosus UZEL と同定した。鹿児島県においてスイゼ ンジナの害虫は7目23科39種が確認されているが 1,2) ,そ の中にアザミウマ目は全く含まれていない。静岡県や石 川県の産地ではアザミウマの被害が問題となり,登録農 薬まであるものの,種の記録は今回が初めてである。ク ロゲハナアザミウマは在来のアザミウマ科の種でキク科 やマメ科の害虫として知られている 4) 。アザミウマを採 集した場所は山間のチャと山林に囲まれたビニルハウス であり,園芸害虫となっている他のアザミウマ類の発生 場所がない。そのため,園芸地帯や平地では別の種のア ザミウマが加害する可能性もあると考えられる。 クロゲハナアザミウマの被害は軽微なものでは葉裏の 紫色が白く脱色したり葉がやや波打つように変形する被 害となり,葉が展開前に加害されたり被害が甚だしいと 奇形の葉となる(第1, 2図) 。 薬剤散布後の5葉あたり平均奇形葉は対照区のエマメ クチン安息香酸塩乳剤2,000倍散布区が1.2葉と最も少な く,スピノサド顆粒水和剤5,000倍散布区は1.6葉と対照 区よりやや多かった(第1表) 。無処理区の平均被害葉 数は3.9葉で,これから各薬剤散布区の防除率を計算する とスピノサド区は59.0%,エマメクチン安息香酸塩区は
doi:10.4165/kapps.50.141 fatcat:2ksa3gtm6jb7tox2ea4ujmnaqq