水稲品種「青天の霹靂」での衛星リモートセンシングを利用した収穫指導の展開
Implementation of harvest guidance using satellite remote sensing in rice "Seitennohekireki"

Eiji Sakaiya, Ryuhei Mikami, Hiroyuki Ono, Morihiro Terada, Koki Suto, Yoshio Inoue
2016
【背景・目的】「青天の霹靂」では、ブランド化に重要な米の食味・外観品質の水準を維持するため、 玄米タンパク質含有率と検査等級に出荷基準を設定している。外観品質を良好に保つには、適期 での収穫が重要であるが、収穫の適期(成熟期)は同じ地域内でも田植日や施肥管理等による変 異が大きい。成熟期の予 測は、現行 では地域や市町村ごとの平均出穂日を起点とした出穂後積 算気温による算出が一般的であり、水田ごとの違いに対応できていない。そこで、衛星画像を利用 して、成熟期を水田単位で予測し、この情報を産地スケールで収穫指導に活用することを試みた。 【方法】青森県津軽地域 13 市町村の「青天の霹靂」栽培水田 1,559ha を対象とした。「青天の霹 靂」の水田 は、衛星観 測前に、生 産者登録情 報を基に生産者から場 所を聞き取りして特定した。 衛星観測は、「青天の霹靂」の水田全域を含む 3,000km 2 を対象に、RapidEye 衛星を使用して 8 月 11 日に雲の少ない良好な画像を取得した。稲の成熟期(暦日)の判定は、達観調査による籾黄 化率
more » ... 。「青天の霹靂」の平均出穂日の算出および予 測精度の検証のため、津軽地域全体で 50 か所の調査水田を設置した。 【結果および考察】衛星画像からの成熟期の予測は、波長 658nm の分光 反射率の分布を、想定される成熟期の正規分布に変換する手法で行い、 予 測 日 の早 晩 に応 じて水 田 を色 分 け表 示 した「収 穫 適 期 予 測 マップ」を 作成した。同マップの情報伝達には、タブレットなどの携帯端末で表示可 能な Web アプリ(当センター作成)を利用した。津軽地域では、各指導機 関が 9 月上旬から中旬にかけて現地講習会などの収穫指導を展開し、生 産者に各々の水田の収穫日を具体的に指導した。利用後のアンケート調 査では、指導員の 9 割が従来技術よりも効果が期待できると回答している。 なお、成熟期の予測誤差(RMSE)は、現行法(市町村単位での予測) が 4.3 日であったのに対し、衛星画像利用では 2.3 日と半分程度に収まっていた。 【謝辞】本研究は、地域戦略プロ、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の支援を受けた。 Web アプリによるマップ表示
doi:10.14829/jcsproc.243.0_169 fatcat:kibakw3izfcl3n4zcntdclc7tu