IV-2. Integrated HACCP system for export of fishery products
IV-2. HACCP 対応

TAISEI KUMAZAWA, IKUO KIMURA
2011 Nippon Suisan Gakkaishi  
サンマなど日本産水産物を価値高く利用するために は,新規の国際マーケットを創出することが重要であ る。一方,水産食品を EU 圏や米国などに輸出する場 合には,漁獲から加工流通過程に関する各国EU の HACCP に準拠した管理が要求される。現状,日本から EU への輸出水産食品取扱施設として認定された数は僅 かに 21 カ所である。財務省貿易統計によると日本から EU への水産物の輸出額は,2009 年では 4,500 万ドル であり,5 年前の 5,700 万ドルよりも減少した。逆に, 欧州から日本への輸出額は 233,000 万ドルである。EU への輸出は日本にとって開拓途上であると考えられる。 日本か ら EU へ の輸 出が少 ない 理由 の一つ は, EU  HACCP 取得数の低さが原因していると言えるであろ う。日本以外のマーケットを複数持つことは水産物を適 正な価値で流通させるためには必須であるが,現状の仕 組みではそれが自由にできない状況にある。ここでは, サンマを対象にした EU HACCP 対応を検討したので その内容を紹介する。 1. EU
more » ... 輸出HACCP 対応 EU へ水産物を輸出するためには,対 EU 輸出水産食 品の取扱基準 1) に基づいて漁獲(漁船)漁港での水揚 げ市場加工保蔵流通の各段階で衛生管理作業 基準を満足し,認定または登録される必要がある。それ を実現するためには施設の整備,あるいは,検査モニ タリングなどのトレーサビリティも含めた仕組みの構築 と実行が求められる。 サンマを EU へ輸出する場合も漁獲から流通にいた る過程,すなわち生産漁船冷凍加工船,市場および水 産加工施設において,対 EU 輸出水産食品の取扱基準 に準ずる HACCP に対応した構造設備と衛生管理基準 2) を満足することが必要となる。しかし,わが国のサンマ 漁船は HACCP に対応できていない。現在,登録され ている 33 隻の生産漁船はホタテ養殖漁船と大中型まき 網漁船,また認定されている 90 隻の冷凍加工船は,カ ツオマグロを漁獲対象とした海外まき網漁船と釣り漁 船などである。 2. 漁船の HACCP 対応 漁船を HACCP 対応とするためには,漁獲物が取り 扱われる作業甲板,魚溜まり,裁割,選別場,魚艙など の床,側壁の構造,冷凍室の温度などに関する諸々の条 件を具備する必要がある。作業場などには,耐水,耐腐 食性材料(アルミ,ステンレス鋼など)を用いるなどし て細菌の繁殖防止を図り,魚体や魚艙などの洗浄に使用 する水は飲用に適した清水または清浄な海水を利用する ことになる。魚艙や凍結装置の保冷能力は,それぞれ0°C と-20°C 以下に設定しなくてはならない。また,漁 獲物処理場内における靴の消毒装置や船内における汚物 処理についても特定の衛生条件が課せられることになる。 3. HACCP 対応の今後 サンマを漁獲している諸外国(ロシア,中国,韓国, 台湾)の漁船は,わが国と同様に HACCP 対応が遅れ ている。国際基準を意識した新しい生産体制創りをわが 国が先行することが,対 EU への輸出を有利に進める ための条件と考えられる。 漁船に限らず漁港,工場,倉庫,流通に関わる一貫し た取組みが要求されるので,もはや 1 企業の対応範囲 を超えた取組みが要求さている状況である。漁港の HACCP 対策は,老朽化した現有施設の改修時期に併せ て行うことになる。青森県の八戸漁港では国の補助事業 として HACCP 対応となる漁港整備事業を行う予定で あり建設が開始されている。密閉した場内を低温管理 し,フィシュポンプによる水揚げ,海水氷による低温管 理等を可能とする施設が構築される。国際的な製造基準 を満足する水産食品を輸出することを可能とするため に,漁業者企業流通業者行政が一体となった取組 みを行う必要がある。 文 献 1) 対 EU 輸出水産食品の取扱要領.厚生労働省医薬食品局食 品安全局,農林水産省消費安全局,水産庁,東京. 2009. 2) 漁船における漁獲物の品質衛生管理について(船内作業及 び船内設備指針) . 社 大日本水産会, 社 海洋水産システム 協会,東京,2002.
doi:10.2331/suisan.77.109 fatcat:7nheiu7lyjccnfgduflp4jvxja