First report of the benthic dinoflagellate of the genus Gambierdiscus from western Wakasa Bay in the Sea of Japan
日本海若狭湾西部において見出された底生渦鞭毛藻 Gambierdiscus 属

YUKI HATAYAMA, AKIRA ISHIKAWA, MASAFUMI NATSUIKE, YUMI TAKEICHI, TETSURO AJISAKA, SHIGEKI SAWAYAMA, ICHIRO IMAI
2011 Nippon Suisan Gakkaishi  
キーワードGambierdiscus 属,シガテラ,日本海,若 狭湾 底生性渦鞭毛藻 Gambierdiscus 属は,海藻などに付着 した生活を行い,世界各地の熱帯,亜熱帯海域で起こる 食中毒シガテラの主要毒素であるシガトキシン,マイト トキシン等を生成する微細藻として知られている。シガ テラは,食物連鎖を通じてこれらの毒素が蓄積された高 次食段階の魚類を喫食することにより発症する。Gambierdiscus 属の基準種である G. toxicus は,フランス領 ポリネシアのガンビエル諸島で発見され,1979 年に報 告されている。 1) 現在ではミクロネシア,カリブ海など 世界各地の熱帯,亜熱帯海域に広く分布することが確認 されている。 日本では南西諸島を中心にシガテラが発生し,G. toxicus の分布も確認された。 2,3) 本州においても散発的にシ ガテラが発生しており,G. toxicus に関しては,伊豆半 島における分布が 1982 年に報告されている。 4) 近年で は千葉県や三重県,和歌山県などの本州太平洋沿岸各地
more » ... scus 属の生息も 確認されていることから,G. toxicus をはじめとした本 属渦鞭毛藻の分布の北上拡大が示唆されている。 5,6) また, G. toxicus を含む付着性渦鞭毛藻が流れ藻から検出され ており, 7) このような温帯域への分布拡大要因の一つと しては黒潮による流れ藻の運搬も考えられる。 日本海ではこれまでシガテラの発生報告は無く,し たがって Gambierdiscus 属に関する調査研究もなされ ていない。しかしながら,日本海には東シナ海から対馬 暖流が流入し,近年では海水温の上昇が指摘されており (気象庁www.data.kishou.go.jp/kaiyou/db/maizuru/ maizuru_warm /maizuru_warm _areaE.html#title) ,か つ,東シナ海由来の流れ藻が流入しているため, 8) 太平 洋沿岸と同じく Gambierdiscus 属が生息している可能性 は充分に予測できる。その場合,日本海産有用魚の消費 によりシガテラが発生する恐れもあることから,日本海 沿岸においてシガテラ発生のリスクを事前に評価するこ とが必要と考えられる。本研究では以上のような背景か ら,シガテラの原因とされる Gambierdiscus 属の日本海 沿岸における生息状況を調査した。 海藻及び海草試料の採取は,2009 年 9 月 24 日に京 都府京丹後市丹後町中浜(水深 0.5~4.0 m35°45.65′ N, 135°10.93′ E) ,伊根町新井崎(0.5~5.0 m35°41.52′ N, 135°18.28 ′ E ) ,宮津市字小田宿野(0.5~2.0 m  35°3 3.23 ′ N, 135°15.27 ′ E ) , 25 日には京都府舞鶴市長浜 (0.5~4.0 m35°29.42′ N, 135°22.02′ E) ,舞鶴市瀬崎 (0.5~5.0 m35°32.75′ N, 135°20.65′ E) ,福井県高浜 町事代(0.5~3.0 m35°29.67′ N, 135°33.28′ E)の計 6 定点において潜水(シュノーケリング)により行い,全 29 種,62 試料が得られた。採集試料は水中でチャック 付ビニール袋に入れた。現場では,採取と同時に水温と 塩分の測定を水温塩分測定器(Kent, EIL5005)により 行った。 海藻試料の処理と Gambierdiscus 属細胞の観察・計数 は,石川・倉島(2010) 5) にほぼ準じた。採取した試料 は,ビニール袋からポリ瓶に移した後密閉し,200 回激 しく震盪して付着物を剥離した。ポリ瓶の内容物は目合 い 200 mm のナイロンメッシュにより濾過し,通過濾液 中の縣濁粒子を目合い 20 mm のナイロンメッシュ上に 捕集した。得られた粒子の縣濁海水には中性ホルマリン を終濃度が 1(v/v)になるように加えて固定した。 また,目合い 200 mm のナイロンメッシュ上に残った海 藻及び海草試料については,野菜の水切り用回転式ザル 容器 (市販品) を用いて手動回転による遠心分離を行い, 試料に付着した余分な海水を振り落とした後,湿重量を 測 定 し た 。 検 鏡 時 に は , 1 mg / mL に 調 整 し た Cal-
doi:10.2331/suisan.77.685 fatcat:kygniztvvbarlgbs4oeh6x657e