Applications of Plasma in Water for Sanitary and Agriculture Fields
水中プラズマの衛生分野,農業分野への応用

Yoshiteru MIZUKOSHI, Tesshu TAMAI, Satoshi SEINO, Hiroshi HORIBE, Yoshimi NISHIMURA
2016 Journal of The Surface Finishing Society of Japan  
1 .水中でのプラズマ発生 プラズマは,気体,液体,固体に続く物質の第 4 の状態で あり,雷やオーロラは自然界におけるプラズマであることが 知られている。他方,コピー機や集塵機,アーク溶接など多 方面でプラズマが利用されている。発生に要する電流の大き さによって,コロナ,グロー,アーク放電などにプラズマは 分類されるが,プラズマは気相での発生が一般的であり,放 電による水中でのプラズマの発生は気相に比べて報告例が数 少ない。その一因としては水の絶縁破壊電圧の大きいこと, つまり気相中での絶縁破壊電圧が数千 kV であるのに対し, 液相の場合はそれよりも 2 ~ 3 桁大きな電圧が必要でその発 生が容易ではないことがまず挙げられる。加えて,電気エネ ルギーが水の電気分解に消費されることも一因といえよう。 これに対し,短いパルス幅で,かつ数 kHz 以上の高い繰 り返し周波数で水中に配置した電極に電圧を印加すると,気 相相当の比較的低い絶縁破壊電圧の印加で,水中に安定的に プラズマを発生させることができることが知られる。発生す るプラズマを「ソリューションプラズマ」と称する場合があ
more » ... ,この方法では,電圧を印加した水中の電極対近傍の水 がジュール熱によって加熱・沸騰し,電極間に生じた水蒸気 の気泡の中にプラズマが発生する 。ピンク色のプラズマか らは激しく水素が発生するが,水の電気分解とは異なり,酸 素の発生は僅少である。図 1 にプラズマの発光スペクトルを 示したが,309 nm のピークは OH の振電遷移に由来し,水 分子の分解で生じた OH がプラズマ内に含まれることが分か る 。スピントラップ・電子スピン共鳴法 やテレフタル酸 を用いた蛍光分析によっても水中での OH ラジカルの発生を 確認できている。 このようなラジカルが発生する点において,水中でのプラ ズマ発生は,放射線,電子線,音響キャビテーションを引き 起こす高出力超音波の水への照射と類似しており,水中の高 エネルギー反応場として注目され,有害物質の分解 ,水中 の大腸菌の不活性化 ,金属ナノ材料の合成 , ,ナノカー ボンの改質・分散化 などへ応用が研究されている。従来の 絶縁ゲートバイポーラトランジスタに代わり,スイッチング 性能に優れる次世代 SiC デバイスを実装したパルス電源の開 発も進み,サブ μ秒の短パルスを数百 kHz の超高周波数で 印加,水中に非平衡プラズマを安定維持できつつある。特殊 な照射施設を要せず,高周波パルス電源のみで発生できるこ とに加え,消費電力も数百ワット程度であるため,水中プラ ズマは実用に近い励起反応場であると考える。 しかしその一方で,既存の水中プラズマプロセスはバッチ 水中プラズマの衛生分野,農業分野への応用 水越 克彰 a ,玉井 鉄宗 b ,清野 智史 c ,堀部 博志 d ,西村 芳実 d a 東北大学 金属材料研究所附属産学官広域連携センター (〒 599-8531 大阪府堺市中区学園町 1-2) b 龍谷大学 農学部 (〒 520-2194 滋賀県大津市瀬田大江町横谷 1-5) c 大阪大学 大学院工学研究科 (〒 565-0871 大阪府吹田市山田丘 2-1) d ㈱栗田製作所 (〒 610-0221 京都府綴喜郡宇治田原町湯屋谷西塔ヶ谷 1-33)
doi:10.4139/sfj.67.302 fatcat:5oqs6i4fqfdtles7oq6v7jw5zy