5. Feeding Regulatory Substances and Obesity
5.食欲制御物質と肥満症

Hiroaki Ueno, Masamitsu Nakazato
2015 Nihon Naika Gakkai Zasshi  
はじめに 2013 年 に は,body mass index(BMI)25 以 上の肥満者は,全世界で約 21 億人存在してお り,1980 年時と比べて成人では約 28%,未成 人では約 47%増加している.日本においても BMI 25以上の肥満者は成人男性で28.9%,成人 女性で 17.6%,未成人男性で 15.3%,未成人女 性で12.4%存在している 1) .肥満者では糖尿病, 脂質異常症,変形性膝関節症,月経異常などを 合併することが多く,最終的には生命予後も悪 くする.肥満症を有する患者が 3%以上の体重 減少を得られれば,糖代謝,血圧,脂質などが 改善することが明らかになっているが,現実的 には減量は容易でない.そこには様々な食物が 24 時間いつでも簡単に手に入る現在の社会状 況と,ヒトにおける複雑な食欲調節のメカニズ ムが背景にある.本稿では,食欲調節のメカニ ズムを概説し,肥満症との関連を考察する. 1.食欲調節機構総論 食欲を制御している中心は視床下部であり, 日内リズム,睡眠,体温などの影響も受けてい る.また,視床下部には末梢臓器(肝臓,消化
more » ... 部には末梢臓器(肝臓,消化 管,膵臓,脂肪組織,筋肉など)からのエネル ギー代謝・蓄積状態,栄養素,消化管ペプチド, アディポサイトカインなどのシグナル,ならび に視覚,嗅覚,味覚,食後の快感や満足感など を含めた大脳辺縁系や大脳新皮質などの上位中 枢からの情報が統合されて制御されている(図 1) .脳内や末梢臓器には,食欲亢進または食欲 抑制作用を持つ多数の食欲制御物質が発現して おり(表) ,神経回路網や血流を介して複雑に情 報伝達されて相互に作用している.また,脳幹 では延髄孤束核に消化管からの神経線維,なら 食欲制御物質と肥満症 要 旨 上野 浩晶 中里 雅光 ヒトの食欲は極めて複雑に調節されている.その中心は視床下部である が,中枢からは大脳辺縁系や大脳新皮質からの情報が入力され,末梢から は食べた栄養素,胃の伸展刺激,消化器からの食欲制御物質,脂肪の蓄積 状態などの情報が入力されて統合処理される.ヒトでは,発達した大脳新 皮質からの欲求が大脳辺縁系以下のシグナルを凌駕して過食となり, 肥満 を呈することがあるが, 食欲制御物質をターゲットにした抗肥満症薬の開 発も進んでいる. 〔日内会誌 104:717~722,2015〕 Key words 肥満,食欲,視床下部,食欲制御物質 宮崎大学内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野 The Update of Obesity Syndrome:Molecular Mechanism, Pathophysiology and Therapies. Topics:I. Recent Topics on Diagnosis and Pathophysiology of the Obesity Syndrome;5. Feeding regulatory substances and obesity.
doi:10.2169/naika.104.717 pmid:26536734 fatcat:g42lernnkvbijpdripjablmsfq