破壊性脊椎骨関節症術後に非閉塞性腸間膜虚血を発症し救命できなかった1例

中山 宗郎, 田上 敦士, 安達 信二, 津田 圭一, 山田 周太, 尾﨑 誠
2017 Orthopedics & Traumatology  
は じ め に 非 閉 塞 性 腸 管 虚 血〔non-occlusive mesenteric ischemia:NOMI,(以下 NOMI) 〕は急性腸間膜虚血 の一種で血液灌流量に付随して腸管が攣縮することで 引き起こされる病態である.虚血が不可逆的になるこ とで腸管壊死を引き起こす予後不良の疾患で,発症は まれであるが術前診断が難しく致命率も高い重篤な疾 患である.近年は早期診断や早期治療に関する様々な 報告があるが,現在においても一定の治療方針が確立 されていないのが現状である.今後は,人口の高齢化 や透析患者の増加に伴う本症例の増加が予測されてい る.今回我々は,破壊性脊椎骨関節症術後透析中の血 圧低下を契機に発症した NOMI の1例を経験したので 若干の文献的考察を加えて発表する. 症 例 症 例:75 歳,女性 主 訴:両下肢しびれと疼痛,間歇跛行,腰痛. 既往歴:慢性糸球体腎炎(人工血液透析歴 20 年) . 家族歴:特記すべきことなし. 現病歴:慢性腎不全に対し腎臓内科かかりつけ.2 年前からの両下肢安静時しびれの訴えあり,間歇跛行 50
more » ... 間歇跛行 50 m,腰痛のため歩行困難となったため当科紹介と なった. 入院時現症:身長 154 cm,体重 65 kg,血圧 155/ 89 mmHg,脈拍 67 回 / 分,体温 36.2℃,動脈血酸 素飽和度 97%. 神経学的所見:MMT はすべて 5 であった.また感 覚障害は認めなかったが, 下腿腱反射は消失していた. 血液検査所見:末期腎不全による腎機能低下あり (表 1) 画像検査所見:レントゲン写真では Cobb 角 45 の 側弯,CT では多椎間の DSA 所見,MRI では L4/5, 5/S に脊椎管狭窄所見を認めた(図 1,2,3) . 入院後経過:術前日に入院,バイタル問題なかった ため手術加療となった. 手術所見:破壊性脊椎骨関節症に対し Th9 から S2 まで後方矯正固定を行った.手術時間は 370 min,術 中出血量は 800 ml であった(図 4) . 術後経過:術後 1 日目はバイタル異常なく経過,術 後 2 日目に腹部膨満,嘔吐,腹痛出現.術後 3 日目の 非閉塞性腸間膜虚血は 1959 年に Ende が腸間膜主管動静脈に閉塞が無い腸管虚血壊死の 3 例を報告し, 以降致死率の高い疾患として報告がなされている.今回我々は透析患者の腰椎固定術後に NOMI を発症 し,救命できなかった 1 例を経験したので報告する.症例は透析歴 20 年の 75 歳女性である.破壊性脊椎 骨関節症による脊柱管狭窄が生じ,Th10 から腸骨までの固定術を全麻下に施行した.術後 3 日目透析中 に血圧低下,低酸素血症,イレウス併発し,ショック状態となり,ICU 管理となった.造影 CT では SMV 分枝狭小化,管区域血流の低下を認め,NOMI が疑われた.術後 6 日目心停止し,蘇生したがアシ ドーシス補正不能となった.術後 10 日目死亡が確認された.NOMI は蘇生率 50% であり,循環,呼吸 不全,敗血症,血液透析が危険因子である.また血液透析患者の救命率は 0 % である.予防は難しいが, 術前透析中や血圧低下時の腹痛や消化器症状の問診も重要である. Key words: NOMI:non-occlusive mesenteric ischemia(非閉塞性腸間膜虚血) , hemodialysis(人工 血液透析) , destractive spondyoathropathy(破壊性脊椎骨関節症) * 長崎大学整形外科 -72 -
doi:10.5035/nishiseisai.66.746 fatcat:qj35543vvrddjjsjxkl44n26s4