Report on the 155th Seminar of VSJ Sputtering and Plasma Process Research Division "Proton Movement in Solid Materials and Films"

Takeo NAKANO
2018 Vacuum and Surface Science  
日本真空学会スパッタリングおよびプラズマプロセス 技術部会(SP 部会)の第 155 回定例研究会が,2017 年 10 月 31 日に機械振興会館にて開催されました。今回は テーマを「固体材料および薄膜中のプロトンの移動」と し,分野の中心的な研究者および気鋭の若手の先生方に 5 件の講演をいただきました † 。参加者は 29 名でした。 いまさら言うまでもなく,水素は真空装置の排気過程 において最後の主要残留成分となる気体です。従って水 素の表面での吸脱着挙動や,固体内部での拡散・透過過 程は,真空科学および工学にとって古くから重要な課題 であり続けています。一方で近年では,エネルギー貯蔵 ・輸送材料としての水素が注目されるようになり,また 水素が引き起こす固体材料の様々な物性変化を利用した デバイスも登場するようになってきています。SP 部会 では,水素を巡るこれら最先端の話題を紹介いただき, 部会員が分野の発展に寄与できる機会を得られるよう, 本研究会を企画しました。 最初の講演では,産総研構造材料研究部門の山田保誠 先生に,調光ミラーに関する講演をいただきました。水
more » ... 関する講演をいただきました。水 素ガス供給によって鏡・透明状態をスイッチする Mg-Y 系の薄膜について,様々な角度からの進展を伺い,実用 化が近くにあることを実感しました。 続いて東工大フロンティア研究所の片瀬貴義先生に, 電気伝導度・赤外反射率をスイッチできるデバイスを紹 介いただきました。これは VO2 膜と高圧力環境下のレ ーザー蒸着で作製した 12CaO·7Al2O3(C12A7)の多孔質 膜とを積層させたもので,大気中の水分が C12A7 層の 微細孔に取り込まれることで VO2 へのプロトンの出し 入れが可能となり,一定温度下で VO2 の金属-絶縁体 転移を実現するものです。 北大工学部の青木芳尚先生には,TiN 微結晶膜の水素 分離膜としての応用を講演いただきました。TiN 中には 水素が H -イオン(ヒドリドイオン)として存在できる こと,H -と電子の混合伝導によって,TiN が高い水素 透過能を示すことを紹介いただきました。TiN はスパッ タ屋にとってお馴染の材料のひとつで,物性に関する活 発なディスカッションが交わされました。 物材機構の宮内直弥先生は,金属層を透過した水素を 電子衝撃によって脱離させ,イオンとしてカウントする 新奇な手法について紹介くださいました。ステンレス箔 の背後から水素を供給し,真空側の表面を電子銃でラス タスキャンすることで,水素透過を画像化できます。こ れによって結晶粒界からの透過を可視化し,透過拡散過 程を定量化した結果が示されました。 最後に,KEK 物構研の間瀬一彦先生に,Pd/Ti 積層膜 を利用した水素排気について紹介いただきました。真空 容器壁面にこの積層膜を真空蒸着し,ベーキング相当の 加熱を行うことで,膜への水素吸蔵が可能となります。 加熱のみで容器壁面をポンプ化できる本手法は,多くの 超高真空装置にとって有望なアプリケーションとなりう ることが示されました。 いずれの内容も大変興味深く,講演中の質疑応答はも ちろんのこと,途中休憩の時間や研究会後にも,講演者 の先生方が参加者から多くの質問を受けていたのが印象 的でした。水素を巡るアプリケーションには膜構造・膜 組成が重要で,SP 部会から寄与できる部分も大きいの ではないかと思います。今後参加者の研究が発展するき っかけとなれば大変幸いです。
doi:10.1380/vss.61.102 fatcat:emfjt43lojdh7krommzhu53pu4