遂行機能障害

2019 Higher Brain Function Research  
〔背景〕脳卒中患者の注意機能評価は,机上検査が主であ るが,机上検査の結果と日常生活動作能力に乖離があること は少なくない。一方,行動評価は日常生活上の注意機能障害 の影響を抽出することが可能である。しかし,急性期脳卒中 患者を対象とした検討は少なく,急性期における信頼性は明 らかではない。 〔目的〕急性期脳卒中患者に対して Moss Attention Rating Scale(MARS)の検者間信頼性を検討すること。 〔対象〕急性期病院に脳卒中の治療目的で入院し,本研究 に同意の得られた 34 名(男性 19 名,女性 15 名) 。 〔方法〕評価は,退院前 1 週間に実施した。注意機能の机 上 検 査 は, 標 準 注 意 検 査 法 の Visual Cancellation Task と Symbol Digit Modalities Test を 実 施 し た。 行 動 評 価 は MARS を用いた。検者は臨床経験年数の異なる作業療法士 2 名(臨床経験 5 年目と 3 年目)とし,分析は Intraclass Correlation Coefficients
more » ... ) を用いて検者間信頼性を検討した。 〔結果〕対象の疾患は脳梗塞 19 名,脳出血 7 名,くも膜下 出血 8 名であった。対象の年齢の中央値(四分位範囲)は, 71.5(65.8-79.8)歳であった。MARS は 34 名全例に実施可能 であり,その検者間信頼性は ICC(2,1)で 0.800(95%信頼 区間 0.586-0.902)であった。一方,机上検査は 34 名中 7 名 が検査の実施が困難であり,実施が可能であった 27 名中 10 名が注意障害あり,17 名が注意障害なしの結果であった。 〔考察〕MARS は急性期脳卒中患者においても実施可能で あった。また,検者間信頼性は臨床経験に関わらず高い信頼 性を有していた。しかし,95%信頼区間は広い範囲を示して おり,治療経過を縦断的に把握する際には可能な限り同一の 検者が実施することが望ましいと考えられた。 Ⅰ─B1─3 視線計測装置を用いた評価が症状理解に有用で あった Bálint 症候群を呈した脳腫瘍患者一例の介入経験 田畑阿美 1 ,山脇理恵 1 ,谷向仁 2 ,上田敬太 3 ,菊池隆幸 4 , 吉田和道 4 ,村井俊哉 3 1 京都大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2 京都大 学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 3 京都大学大学院 医学研究科精神医学, 4 京都大学大学院医学研究科脳神経外 科学 〔はじめに〕Bálint 症候群は,両側視空間内の不注意およ び探索行動障害を呈する特異的な症候群で,日常生活にさま ざまな障害をもたらす。今回,脳腫瘍摘出術後に Bálint 症候 群を呈し,視線計測装置を用いた評価が症状理解に有用で あった症例を経験した。 〔症例〕40 代右利き男性。 [現病歴] X-21 年,脳室内髄膜腫に対して開頭腫瘍摘出術,γ-knife 施 行。X 年,再発,水頭症に対して,第 3 脳室開窓術,開頭腫 瘍摘出術施行。術後,右後頭葉皮質下出血。X + 1 年,再発 (脳室内~左視床を圧迫) ,開頭腫瘍摘出術施行。術後,左視 床内側・左後頭葉内側梗塞。 [神経学的所見]JCSI-2,右同 名半盲,左滑車神経麻痺,複視。運動麻痺なし。 [神経心理 学的所見]Bálint 症候群 (視覚性注意障害,精神性注視麻痺, 視覚失調) ,視空間認知機能低下,健忘。右半側空間無視な し。 [神経心理学的検査所見]VPTA(線分の長さ・傾きの弁 別,数の目測,錯綜図,図形模写,色相の分類,なぞり読み で特に低下) ,WMS-R(一般的記憶,言語性記憶,視覚性記 憶,遅延再生;50 未満。注意 / 集中;80) 。 [日常生活]文字 を飛ばして読む,携帯電話の操作で押したいボタンに指がい かない;特に注視下,右空間内で強く生じる右手の測定障 害,歩行時に壁にぶつかる,他者が指さした対象物を見つけ られない。視野障害に対する病識低下。 〔方法〕視線計測装 置 Gazefinder ® を用いて,視覚性課題遂行時の視線計測を実 施した。 〔結果〕追視時の眼球運動速度の低下,固視点の動 揺,両側視空間内における注意のシフト困難を認めた。 〔考 察〕視線計測装置を用いた評価を行った結果,日常生活上の 問題点の多くは,視野障害に対する代償手段の未獲得に加え て,眼球運動の随意的なコントロールの難しさや,注意のシ フト困難が原因と考えられた。Bálint 症候群に対するリハビ リテーションでは,疾病教育に加えて,眼球運動や視覚性注 意に対する介入が必要であると考えられる。 【 第 1 日 B 会場:遂行機能障害 】 座長:小森憲治郎 Ⅰ─B2─1 展望記憶は記憶なのか,遂行機能なのか 太田信子 1 ,種村純 1 1 川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科 〔目的〕展望記憶評価 The Cambridge Prospective Memory Test(CAMPROMPT)の存在想起得点と内容想起得点に 関与する RBMT,BADS の項目を検討した。 〔対象と方法〕脳損傷者 76 名,平均年齢 46.7 歳。WAIS-3 に お い て 言 語 性 IQ95.9, 動 作 性 IQ89.9, 全 検 査 IQ92.7, RBMT プロフィール得点 15.3,BADS 総プロフィール得点 16.4 であった。CAMPROMPT は背景課題を実施しながら展 望記憶の 6 課題を記銘・想起する。メモの記載と参照が許可 される。まず CAMPROMPT6 課題の存在想起得点を従属変 数,RBMT の下位検査プロフィール得点および BADS の下 位検査得点を独立変数として重回帰分析を行った。次に CAMPROMPT6 課題の内容想起得点を従属変数,RBMT の 下位検査プロフィール得点および BADS の下位検査得点を 独立変数として重回帰分析を行った。さらに,標準偏回帰係 数が 0.2 以上の項目を対比して検討した。 〔結果〕存在想起得点の標準偏回帰係数は BADS では修正 6 要素 0.338,RBMT では道順直後 0.222,用件 0.228,道順遅 延-0.355 であった。内容想起得点の標準偏回帰係数は BADS では修正 6 要素で 0.309,規則変換 0.243,RBMT では約束 0.255 であった。 〔考察〕存在想起得点は遂行機能課題,展望記憶課題と高 い関連性を認めた。さらに,系列的行動の記銘と遅延再生と も関連性が認められた。内容想起得点は遂行機能,展望記憶
doi:10.2496/hbfr.39.56 fatcat:2yiyuyu22rajnlgs4mwwanpsoe