ICT Support for Product Life Cycle Development : Current Trends and Future Perspective
製品ライフサイクルにおけるICTの活用状況と今後の展望

Fumihiko KIMURA
2015 Journal of the Japan Society for Precision Engineering  
1.は じ め に ICT(情報通信技術)の急速な発展により,われわれの 社会は大きく変貌している.例えば,スマートフォンの普 及は人々の日常生活に大きな影響を与えており,またそれ を製造・提供する産業も ICT の活用により今までにない 形態をとろうとしている.本稿は,家電・情報機器・自動 車のような消費者向け大量生産品や産業機械などを主な対 象として,製品そのもの,あるいはそれらの設計生産活 動・技術が ICT の影響により,今後どのように発展して いくかを考察する. わが国も含めて,欧米など工業技術の先進国における製 造業は,発展途上国とのコスト競争などにより,困難な時 代を過ごしてきており,近年はいわゆる伝統的な製造業の 衰退が危惧される状況にも陥っていた.ところが最近,ド イツでは Industrie4.0 1) のような,産官学を挙げて国家レ ベルで製造業を活性化させ,競争力を強化しようとする活 動が強力に推進され,英国 2) ,米国 3) などでも同様の動き が見られるようになってきた.わが国でも革新的設計生 産 4) などとして同様の動きが始まっている.
more » ... の具体的な内容は各国の事情によりさま ざまであるが,ICT の活用により製品や設計生産活動を 革新しようという基本的な考え方があることは共通であろ う.CPS(Cyber-Physical System) 5) ,IoT(Internet of Things) ,IoS(Internet of Services) ,Industrial Internet, Big Data 6) ,MBD(Model Based Design) 7) ,Digital Manufacturing などのキーワードが引用されている. しかし, 「こと」から始まる製品開発,製品ライフサイ クル管理,また CAD/CAM や高度シミュレーション,生 産自動化や自律化など,ICT により製品や設計生産を高 度化しようという研究開発は,今に始まったわけではな く,少なくとも最近の 20 年間にかけて継続的に行われて きた.したがって基礎的な考え方はよく理解されている. しかし,計算機能力やネットワーク機能が未成熟でありコ スト高であったために,現実的に実用化できていなかった ことも多い.近年に至り,計算機のみならずセンサーやア クチュエータなども高機能・高精度・小型化,低価格化が 進み,高速・大容量のネットワークも広範囲に普及してき た.汎用的な支援ソフトウェアも整備され,標準化も進ん できた.ものづくりの徹底した ICT 化を実現できる臨界 点を超えたということであろう. 本稿では,今後見込まれる ICT の発展を基に,ものづ くりの革新を考える.次のような事柄を指標として考察し てみることも有効であろう. ・ デジタル化の徹底度 デジタル化が可能で有効でありながら,技術や経済の状 況が変わったにもかかわらず過去の制約に捉われて実行し ていない例は多い. ・ 要求される状況への適合度 過大な機械,過剰な機能など,さまざまな変動下で生ず る余裕は無駄を生む.デジタル化により状況変化への迅速 な適合が見込まれる. ・ 人の役割の明確化 機械にできることは機械に任せて,人の中途半端な介入 を排除する.人がなぜ介入しなければならないのかを明確 にすることは重要である. 次のような視点も重要である.方法は一般的であって も,製品や状況により,製品設計や生産の実現形態は異な り,汎用的な解はない.ICT による迅速・柔軟な対応が 望まれるゆえんである.近未来には,ICT の向上により, 定型的な活動をする設計者・技術者の仕事はデジタル化さ れると考えられる.ものづくり価値の創造という観点から 人の役割を見直す必要がある. 2.製造業を取り巻く状況 すでによく議論されていることではあるが,現代の工業 先進国における製造業を取り巻く課題についてまとめてお こう. ・ 工業先進国と発展途上国との競争
doi:10.2493/jjspe.81.201 fatcat:dt67q5atfngb7lpo6jo3c3u64y