溶融塩・イオン液体と表面処理技術 低温溶融塩・室温イオン液体を用いるAlおよびAl合金電析
Aluminum and Aluminum Alloy Electrodeposition in Low-Temperature Molten Salts and Room-Temperature Ionic Liquids

Mikito UEDA, Koichi UI
2009 Journal of The Surface Finishing Society of Japan  
軽金属に分類される Al は,耐食性,熱伝導性,および電 気伝導性に優れるので,構造材から電子部品に至るまで,幅 広い分野に用いられている。しかし,Al は卑な金属 (標準電 極電位 -1.676V vs. SHE) であるため,水溶液系からの電析 は不可能なので,有機溶媒系または溶融塩系からの電析が研 究されている。また,溶融塩の研究において,Al の電析反 応が関与するものの報告は非常に多い。30 年前であれば高 温溶融塩を用いての Al 電解製造に関するものであったが, 最近では,固体で析出させる Al 電析に関わるものや,他の 成分との共析反応による Al 合金電析に関する報告も数多く ある。電解液についても,従来からの浴温 150℃前後で取り 扱うことのできる無機溶融塩の他に,有機物を含む室温イオ ン液体と呼ばれる室温域で液体を形成する室温型溶融塩 (常 温型溶融塩) も多く用いられている。ここでは,Al 電析およ び Al 合金電析について,電解液の種類に大別して,それら の報告を解説する。 2 .AlCl 3 系溶融塩のイオンの種類 AlCl
more » ... けでは溶融塩を形成 することができない。そこで NaCl のような 1 価の塩化物と の組み合わせにより,2 成分系の溶融塩とする。この場合に は Cl が供与されるため,AlCl は AlCl としてイオンを形 成する。即ち,ルイス酸である AlCl (塩化物アクセプター) とルイス塩基として作用する金属塩化物 (塩化物ドナー) を混 合し,温度制御を行うことにより,溶融塩が構成される。図 1 に AlCl -NaCl の二元系状態図を示す 。NaCl 単独ではそ の融点は 803℃であるが,これに AlCl を添加することで融 点は著しく低下する。混合比 1:1(NaCl および AlCl の分 率 が 50mol%) で の 融 点 は お よ そ 160 ℃ で あ る が, さ ら に AlCl を混合することでわずかに融点は下降し,AlCl 分率が 約 63mol% のとき最低の融点を示す。このときのイオンの形 態を示すと式 (1) の反応より,ナトリウムとアルミニウムは イオン化し, それぞれ, Na および AlCl のような形態となっ ている。 NaCl + AlCl → Na + AlCl ............(1) これよりも AlCl が過剰になると (50mol% 以上) ,さらに式 (2) の反応も進行し, Na + AlCl + AlCl → Na + Al Cl ......(2) アルミニウムイオンは Al Cl という二量体を形成する。こ の Al Cl が Al 電析に必要なイオン種となる。 一方,有機系室温型溶融塩も,AlCl と有機塩化物の混合 塩を中心に広く研究されてきた。有機塩化物としては,1-ブ 低温溶融塩・室温イオン液体を用いる Al および Al 合金電析 上 田 幹 人 a ,宇 井 幸 一 b a 北海道大学 大学院工学研究科 (〒 060-8628 北海道札幌市北区北 13 条西 8 丁目) b 岩手大学 大学院工学研究科 (〒 020-8551 岩手県盛岡市上田 4-3-5)
doi:10.4139/sfj.60.491 fatcat:xqagrothfrcvbntwt2epq6ct5a